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災害時にかかりつけ医ができること [お茶の水だより]

No.4800 (2016年04月23日発行) P.12

登録日: 2016-04-23

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▼熊本県を中心に甚大な被害をもたらした一連の地震。その揺れは、西南の役で熊本城に籠城して西郷軍の猛攻を凌いだ谷干城が「石なれと 固く守りし かひありて けさ日の御旗 見るぞうれしき」と詠み、難航不落の象徴だった石垣が崩落するほど凄まじいものだったようだ。まず被災された方々に心よりお見舞い申し上げたい。
▼熊本県では地域医療が崩壊の危機に立たされている。同市の防災拠点施設に指定されている熊本市民病院は、倒壊の恐れがあるため外来診療と入院治療を中止。その影響で県の災害拠点病院の熊本赤十字病院はパンク状態だという。
▼政府は非常災害対策本部を立ち上げ、厚労省はDMAT(災害派遣医療チーム)の派遣を要請。日本医師会もJMATの派遣元を全国に拡大するなどオールジャパンで対応に当たっている。
▼東日本大震災でも同様に全国から人的・物的支援が集まったが、被災地における情報伝達の重要性が教訓とされた。3月に日医総研が主催した災害医療に関するシンポジウムでは、ステファニー・ケイデン氏(ハーバード大)が講演で「地域住民の声に耳を傾けなければ適切な支援はできない」と強調したように世界共通の課題となっている。
▼今後は時間の経過につれ慢性疾患などへの対応が重要になる。カギとなるのは、日頃から地域住民の健康管理を行うかかりつけ医が持つ患者情報を、搬送先の医療機関や避難所と共有し、適切に連携できるかどうかだ。18日には避難所における高齢者の死亡事例が報道された。慢性疾患を有していたかは不明だが、こうした「2次災害」を防ぐには、「顔の見える関係」を築いている地域のかかりつけ医が果たす役割が大きいといえるだろう。

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