株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

病床機能報告制度、より適切な報告が必要だ [お茶の水だより]

No.4768 (2015年09月12日発行) P.10

登録日: 2015-09-12

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

▼本欄タイトルの通り、小社は東京・お茶の水にある。眼下には深い谷を神田川が悠々と流れ、なかなかの風情だが、なぜ都心に突然渓谷が現れるのか。
▼この辺りの神田川は江戸城の外堀だ。江戸幕府は東北の守りを固めるため本郷台地を切り崩し、約20メートルの谷を開削。驚くべきは、この大規模工事が幕府の命を受けた仙台藩一藩の力で1660年ごろには完成していたことだ。権力基盤が盤石でなかった幕府にとっては緊急性が高く、仙台藩にとっては藩の命運を左右する大事業だったことが窺える。
▼翻って現在喫緊の大事業の1つに、2025年に向けた医療提供体制の構築がある。地域医療構想の基となるのは、医療機関が医療機能の現状と方向性を4機能から選択する病床機能報告制度。病床再編を見据えているが、昨年度報告によると6年後の急性期は約2万8000床の減少にとどまり、高度急性期に至っては約8400床の増加となった。
▼お茶の水は全国一の特定機能病院密集地。その特定機能病院について、厚生労働省の地域医療構想ガイドライン策定に関する検討会で、「大学病院本院はすべて高度急性期で報告する申し合わせがあったようだ」と問題視する意見が出た。地域の中核病院でも全病棟を高度急性期とするケースが見られるという。病床機能報告制度は機能の実態を報告するもので、「7対1入院基本料を算定=高度急性期」という図式や足並みを揃えたりするのは筋が違うだろう。
▼高齢化に対応する医療提供体制を構築するのは大変な事業だ。しかし、地域医療構想策定は医療界の自主性を重んじているもののいわば「幕命」。まずは10月から始まる今年度の病床機能報告制度で、各医療機関が制度の趣旨と狙いを理解した上で、適切な報告がなされることを期待したい。

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top