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「私たちと同じ目に遭ってほしくない」 [熊本市民病院医師]

No.4811 (2016年07月09日発行) P.11

登録日: 2016-07-09

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熊本地震で総合周産期母子医療センターとしての機能を停止した熊本市民病院(用語解説)の川瀬昭彦氏(新生児内科部長)が6月30日、厚生労働省の「周産期医療体制のあり方に関する検討会」で被災状況を報告した。川瀬氏は「NICUのように補完の難しい機能を持つ医療機関の災害対策の重要性を痛感した。二度と私たちと同じ目に遭ってほしくない」と述べ、国による施設耐震化への補助金の充実・強化を訴えた。
川瀬氏は、4月16日未明に起きた「本震」の際の対応について、「酸素投与などが必要な最重症児の避難に戸惑った。一時避難した病院1階のリハビリ室では余震の度に赤ちゃんに覆いかぶさり、人工換気が必要な子にはずっとバギングしていた。1つの酸素ボンベを複数の赤ちゃんに使った」と報告した。
新生児の移送を巡っては、日本新生児成育医学会の災害時連絡網や隣接県の他施設との迅速な連絡により、「本震8時間後には残り1名まで移送を完了した」と説明。検討会の構成員からは九州の周産期医療関係者の団結力を称賛する声も上がったが、川瀬氏は「21名の新生児が県外搬送され、ただでさえ母子分離の状況があるのに面会がさらに難しくなった」との課題を指摘した。
熊本市は年内をメドに、事務課などがある管理棟でNICUを再開する方針を示しているが、規模は従来の半分(9床)になる。川瀬氏は「NICUが県内で補完しきれない状況に変わりはなく、できることは限られる。やむをえず県外で出産した熊本人を早く県内に呼び戻したいが、歯痒い思いだ」と話した。


●用語解説
【熊本市民病院】
熊本県内最大の総合周産期母子医療センター。今回の地震でNICU18床(県内の38%)、GCU24床(同37%)、手術を要する先天性心疾患児(同100%)等の医療機能を喪失。一部建物に倒壊の危険性が指摘されており、熊本市は2018年度中の移転再建を目指す。

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