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調剤「患者本位の医薬分業」が評価軸 - 質の担保につながる評価体系構築がカギ [どうなる?2016年度診療報酬改定]

No.4762 (2015年08月01日発行) P.9

登録日: 2015-08-01

最終更新日: 2016-11-24

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(概要) 政府が「抜本的見直し」を求めている調剤報酬。地域包括ケアへの取り組みを評価するなど、実際に薬局や薬剤師が果たす役割に応じたメリハリのある見直しが行われそうだ。


次期診療報酬改定に向けた議論でポイントの1つとなるのは、6月に政府が閣議決定した「規制改革実施計画」で「抜本的見直し」が打ち出された調剤報酬のあり方だ。中央社会保険医療協議会では7月22日、調剤報酬を巡る議論がスタートした。
前回2014年度改定では、「お薬手帳」を交付しない場合の薬剤服用歴管理指導料が引き下げられたほか、「門前薬局」への対応として調剤基本料の特例が見直されるなど、医薬分業やかかりつけ薬局に求められる機能を果たさない場合に、締めつけが行われた。しかし、規制改革実施計画はその取り組みを不十分として、「薬局の機能やサービスに応じた」評価体系への転換を明記。門前薬局にはさらなる評価見直しを求める一方、服薬管理や減薬で「努力した薬局・薬剤師」への評価を重視するなど、調剤報酬はメリハリの効いた改定となる見通しだ。

●実際の機能に応じた評価体系へ
22日の会合では、厚労省が3つの論点(別掲)を提示。「患者本位の医薬分業」を目指すとした。医療機関の薬価差益解消や薬物療法の安全性・有効性の向上を目的に進められてきた医薬分業は、13年度時点で67%(処方箋発行枚数ベース)まで普及。しかし、医薬分業が進むにつれ門前薬局が急増、大手チェーンを中心に、鈴木邦彦委員(日医)が「調剤バブル」と指摘する状況となったほか、院外処方と院内処方の点数格差や患者・保険者の負担増、患者の利便性などがデメリットとされてきた。
注目されるのは、診療側だけでなく医薬分業の推進を支持してきた支払側も、現行の医薬分業のあり方を問題視している点だ。白川修二委員(健保連)は医薬分業の必要性を認めつつ、「負担増に見合う効果があることが前提」と強調。薬剤服用歴管理指導料を例にとり、「記録をとってコンピュータに入力するだけでも41点を算定できるが、本来は服薬指導をしてもらうための費用」と指摘した。
中川俊男委員(日医)も「調剤加算の多くが質の評価ではなく体制を整えれば算定できる」と調剤報酬の評価体系の妥当性に疑問を呈するなど、今後は薬局や薬剤師が提供するサービスの質が担保されるような評価体系の構築が、ポイントとなりそうだ。

●残薬削減に向けた取り組みも課題
調剤報酬では、残薬削減への取り組みとして、規制改革実施計画が検討を求めている分割調剤の見直しやリフィル処方箋の導入も検討する。分割調剤は、(1)長期保存が困難な場合、(2)後発品を初めて使用する場合─に限り認められている。厚労省の調査では、500床以上の病院で内服薬1種当たりの平均投与日数が37.7日、残薬経験がある患者は半数以上となっており、対象が拡大される見通し。
リフィル処方箋は、一定期間内に定められた回数であれば繰り返し利用できる処方箋。しかし、残薬削減の観点からは効果が未知数であり、導入については非現実的と言えそうだ。

【記者の眼】地域包括ケアでは薬剤師が重要な役割を担うが、医師の業務は「服薬管理」、薬剤師は「服薬指導」と「薬剤管理」。主治医機能を評価する地域包括診療料/加算で服薬管理が要件となったように、それぞれの役割を踏まえた調剤報酬のあり方を探るべきだろう。(T)

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