株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

小児科医の確保と育成について

No.5246 (2024年11月09日発行) P.54

窪田 満 (国立成育医療研究センター総合診療部統括部長)

染谷真紀 (京都大学医学部附属病院総合臨床教育・研修センター/クリニカルシミュレーションセンター)

登録日: 2024-11-08

最終更新日: 2024-11-05

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
    • 1
    • 2
  • next
  • 2020(令和2)年のわが国の小児科医数は1万7997人と微増していますが,60歳以下の人数は15年ほど前からほとんど増えていません。つまり,小児科医の高齢化が進んでおり,若手小児科医の確保が小児医療の維持には急務となっています。しかし,2024年に小児科研修を開始する専攻医数は532人にすぎず,全国の188の基幹医療機関のうち,172医療機関で定員割れを生じています。どのようにすれば,医学部学生や初期研修医の先生方に小児科医になりたいと思って頂けるのでしょうか。
    小児領域の医学教育に詳しい京都大学医学部附属病院総合臨床教育・研修センター・染谷真紀先生にご解説をお願いします。

    【質問者】
    窪田 満 国立成育医療研究センター総合診療部統括部長


    【回答】

    【小児科医一人ひとりが魅力ある小児科医を実現し,複合的な改善プログラムを展開することが必要である】

    次世代の医療者育成は,どの診療領域においても重要な課題です。

    小児科医数は過去20年間で微増しており,15歳未満人口10万対医師数は,2020(令和2)年には1994(平成6)年の約2倍に増加していますが,少子化の影響も考えられ,実際の現場では人手不足が続いています。年代別に見ると,29歳以下,30~39歳,40~49歳の小児科医数は過去20年ほとんど変わらず,50~59歳は増加後に減少,60~69歳,70歳以上の年代は増加しています。2010〜20年の10年間の医師数推移では,小児科は39診療科中7番目と増加していますが,35歳未満の医師数に限ると39診療科中ワースト3位でマイナス推移であり,若手小児科医師の減少という危機が明らかになります。小児科医の高齢化と若手小児科医の不足は,将来の小児医療の維持に深刻な影響を及ぼす可能性があります。解決のためには,卒前教育から初期臨床研修,小児科専門トレーニング,そして小児科医としてのキャリアの各フェーズにおいて,効果的な施策を講じることが必要です。

    (1)卒前教育

    課題:小児科への興味喚起不足とキャリアパスの不透明さ

    医学生は小児科の臨床実習で診療に触れる機会がありますが,小児科の本当の魅力は伝わりにくい状況です。臨床実習を見学型から参加型に移行する試行錯誤が続いていますが,小児科領域ではさらに工夫が必要です。短期間・単施設の実習だけでなく,医学部入学後早期から多様な小児科診療の場面を経験させ,キャリアパスを明確にすることが必要です。

    残り801文字あります

    会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    関連書籍

    もっと見る

    関連求人情報

    関連物件情報

    もっと見る

    page top