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特集:ダウン症候群の成人期医療─主な合併症と健康管理指針

No.5206 (2024年02月03日発行) P.18

竹内千仙 (東京慈恵会医科大学附属病院遺伝診療部講師)

登録日: 2024-02-02

最終更新日: 2024-01-30

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1996年東京女子医科大学医学部卒業。東京女子医科大学病院脳神経内科助教を経て,2010年東京都立北療育医療センター内科・脳神経内科医長。2022年9月より現職。

1 ダウン症候群とは

・21番染色体のトリソミーに起因し,最も多い染色体疾患である。
・今日では,ダウン症候群のある子どもの90%以上が成人となり,寿命は60歳を超えている。

2 ダウン症候群で成人期の医療が必要な理由

・ダウン症候群では成人後も様々な合併症があり,定期的な健康管理が必要とされている。
・近年,「ダウン症候群のある患者の移行医療支援ガイド」「成人期ダウン症診療ガイドライン」が作成され,包括的な診療指針が示されている。

3 成人期の主な合併症と健康管理指針

・甲状腺機能低下症が40~60%に合併する。20歳代以降では1~2年おきの甲状腺機能検査を行い,甲状腺機能異常症のスクリーニングを行う。
・高尿酸血症を約半数に認める。毎年尿酸値の測定を行い,尿酸値が7.5mg/dL,あるいは8.0mg/dL以上で内服治療を検討する。
・肥満の頻度は高いが,肥満の程度は諸外国に比べて軽度である。
・脂質異常症を約30~40%に認める。
・ダウン症と肥満・過体重のある成人では,定期的な2型糖尿病のスクリーニングを行う。
・生涯で約30%が精神症状や精神疾患を合併し,最も多いのはうつ病である。
・40歳以上でアルツハイマー病の合併が増えるため,40歳以降は毎年認知機能の確認が必要である。

4 ダウン症候群の成人期医療:包括的な支援のために

・ダウン症候群では高血圧,悪性固形腫瘍の発生が少なく,老衰,アルツハイマー病,肺炎による死亡が多い。
・ダウン症候群の自然歴を理解し,生涯を通じた適切な医療提供体制の構築が必要とされている。

1 ダウン症候群とは

21番染色体のトリソミーに起因するダウン症候群は,最も多い染色体疾患であり,知的障害の原因としても最も多い。1866年に英国の内科医師John Langdon Downにより初めて記載され,1959年にフランスの小児科医師Jérôme Lejeuneにより,21番染色体のトリソミーによる発症が確認された。ダウン(Down)症候群は1965年に,最初の報告者であるDown医師の名にちなみ,正式名称とされた。標準型(トリソミー型)が95%,転座型が3〜4%,モザイク型が1〜2%である。主な身体的特徴や合併症は世界共通であり,発症率は国や地域によって異なるものの,おおむね600~1000出生に1人と推定されている。本邦における2010~2016年の出生数は,年間約2200人(1万出生当たり20.5~22.6人)と推定され,国内のダウン症候群のある患者数は約8万人と推測されている。その平均寿命は,1970年頃までは10歳程度であったが,小児医療の進歩,特に先天性心疾患の手術成績・術後管理の向上により延伸し,現在では60歳以上となった。ダウン症候群のある子どもの90%以上が成人を迎えることができるようになり,過去50年間で50歳余命が伸びたことになる。国内の最高齢は102歳と報告されており,ダウン症候群のある成人および高齢者は,確実に増加している。

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