株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「外科系学会での現在のトピックス」野村幸世

No.5199 (2023年12月16日発行) P.61

野村幸世 (東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)

登録日: 2023-12-04

最終更新日: 2023-12-04

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

先日、日本臨床外科学会総会に参加した。学会総会の肝となる特別企画の多くを占める主題が、働き方改革、外科と家庭との両立に関するものであった。

外科系の学会総会といえば、手術のこととか、患者の術前術後管理に関することなどを主題としてきたのであるが、今回の主題の様変わりには驚かされた。しかも、以前からある「女性外科医がいかに家庭と外科を両立していくか」といったテーマのセッションは、特に初期の頃は観客が少なかったのだが、今回は女性外科医セッションを含め、働き方関連のセッションで多くの観客を集めていた。皆、来年度から開始される「医師の働き方改革」に興味があるということであろう。

皆が興味を持つのは大変良いことであるが、女性外科医セッションに初期の頃から関わってきた筆者にとっては、それが遅すぎるように思えてならない。女性外科医セッションで20年くらい前から議論されていたような働き方の話が、いまさら、議論されている。

私が所属する大学の医局でも、当直に関して改めて議論の俎上に載せた。今まで、子どもの年齢が低く、当直免除を求める女性医師に対して、免除をするか否かは当直を決める医師が判断をしてきた(というか、要望があれば認めてきた)。しかし、その判断の重さや不公平感などから、討議になっているようである。

改めて、女性の深夜勤の免除の条項を定めた「男女雇用機会均等法」を見てみると、女性が深夜勤の免除を求めた場合、それを優遇するのは妊娠期から子どもが就学するまでのようである。男女雇用機会均等法が定められたのは1985年と、38年前であり、かなり現状にはそぐわないものであることを認識した。

現代では、男性にも女性と同様の家事、育児への参画が求められる。それなのに、女性だけに子どもゆえの深夜勤の免除を行うのはおかしな話である。私個人の考えであるが、母親が父親よりも優先され、子育てを行うべきは妊娠期から授乳期である子どもが1歳になるまでと思う。子どもが1歳以上になれば、男女共に子育てを理由に仕事をセーブする権利があると思う。

とはいえ、基本、どちらかの親がいれば深夜の育児も可能なわけで、深夜勤の免除は一時にはどちらかの親に与えられれば良いのである。しかし、それを判定しようとすると、一人親とか片親の単身赴任とか、各家庭にふみ込んだ判断をしなくてはならなくなる。また、子育てだけではなく、昨今は介護の問題もある。

こうなると解決策は難しいとしか言いようがない。やはり、当直に対し、満足のいく報酬が支払われることにするしかないような気がする。

野村幸世(東京大学大学院医学系研究科消化管外科学分野准教授)[医師の働き方改革][男女雇用機会均等法][深夜勤の免除]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連書籍

関連物件情報

もっと見る

page top