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第25回日本神経消化器病学会を振り返って

No.5197 (2023年12月02日発行) P.44

永原章仁 (順天堂大学医学部消化器内科教授・第25回日本神経消化器病学会会長)

登録日: 2023-12-03

最終更新日: 2023-11-29

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1 日本神経消化器病学会とは

これまで,消化器医の診療は,どうすれば早期癌を診断できるのか,進行癌にどう対峙するのか,逆流性食道炎,潰瘍性大腸炎をどう粘膜治癒に持っていくか,など,目で見える病気に対して全精力を傾けてきた。一方,胃痛・胃もたれから診断される機能性ディスペプシア(FD),腹痛・便秘・下痢を繰り返す過敏性腸症候群(IBS),そして慢性便秘症など,画像では診断しえない疾患が注目され,こうした機能性消化管疾患の診断機会は増加している。その発症メカニズムには脳腸相関が知られているが,先人達はこの関係に着目し,様々な学会・研究会で本領域の研究,医療を牽引してきた。

本学会は,2002年に設立された日本Neurogastroenterology(神経消化器病)学会と1998年に設立された日本国際消化管運動研究会が統合する形で2009年に発足した。さらに,2017年にはこれまで別個に活動していたFD研究会,消化器心身医学研究会,IBS研究会を統合して現在に至っている。

2 第25回日本神経消化器病学会

第25回日本神経消化器病学会は2023年9月28日(木)〜29日(金)の2日にわたり,京王プラザホテル(東京)にて開催された(図1)。

   

脳腸相関,内臓知覚が広く一般に知られるはるか以前の2002年,前身となる日本Neurogastroenterology(神経消化器病)学会は順天堂大学消化器内科教授(当時)の佐藤信紘先生により設立されたが,順天堂大学発祥の伝統ある学会を25年の節目に当大学で担当できることは,偶然の中の必然を感じ,緊張の中で開催準備を行った。本会は「継往開來」すなわち「先人の事業を継続し,未来を開いて発展させること」をテーマとした。四半世紀にわたる研究成果から,今後の研究・医療の展開について全方位にアンテナを張った主題テーマを設定し,医学,獣医学,薬学,理工学の研究者が領域横断的に参集し,2日にわたり議論を深めた。

3 プログラム

今回は四半世紀の節目の会であり,特別セッションとして歴代理事長鼎談〔星ヶ丘マタニティ病院/金子 宏先生(座長),順天堂大学/佐藤信紘先生,塩竈市立病院/本郷道夫先生,川西市立総合医療センター/三輪洋人先生〕を設け,歴代理事長に神経消化器病学のこれまでと今後について多くを語って頂いた(図2)。

東国原英夫氏による特別講演「逆境を生き抜く力」では,逆境に直面したとき,不平不満を言うのではなく,まっすぐ次にやるべきことを考え実行すべきであると,ユーモアを交えて語られ,会場は爆笑に包まれた(図3)。

神経消化器病学初学者を意識して,初めて設けた教育講演では「ヘリコバクターピロリ抗原検査」「食道インピーダンス・pHモニタリング」「直腸肛門内圧検査」についてのレクチャーを行った。

シンポジウムは「上部消化管FGIDの基礎と臨床」「IBSの基礎と臨床」「慢性便秘症の基礎と臨床」「FGIDと腸内細菌」「FGIDと生理・生化・栄養」「FGIDと漢方薬」「神経消化器病学 基礎研究の新展開」の7題で,基礎から臨床まで,医療を越えて健康そのものをテーマとしたディスカッションが活発に行われた。

一般演題では多くの新たな知見についての発表が行われた。いずれも明日の診療に役立つものであり,研究への新たな活力を得る内容であった。

4 学会賞

学会賞については今回から学術賞選考委員会を設け,審査基準を明確化した。

最優秀演題賞は「ウェアラブルデバイスによる機能性ディスペプシアの自律神経機能解析」(大阪公立大学/田中史生先生)が,優秀演題賞は「チロシンキナーゼ阻害薬は糖尿病による消化管運動異常を改善する」(東京大学/岸 和寿先生)と「重症便秘患者から無菌マウスへの糞便移植が大腸運動機能異常及び器質的構造変化を引き起こす」(九州大学/白 暁鵬先生)の2演題が選ばれた。

消化器心身医学研究会の並木正義先生(旭川医科大学第3内科)から継承された並木賞は,心療内科的話題に関連した発表演題の中で特に優れた研究に対して授与されるもので,「高尿酸血症のレーザー誘起衝撃波惹起性過敏性腸症候群に与える影響の検討」(防衛医科大学校/西村弘之先生)が選ばれた。

5 市民公開講座

2023年9月30日(土),順天堂大学にて市民公開講座が開催された(図4)。「明日に役立つ大人の“おなか健康学”〜便秘,おなかの悩みと,腸内細菌の持つ力~」をテーマに,順天堂大学消化器内科,同大学細菌叢再生学講座,東京工業大学の先生方の講演とパネルディスカッションは,「茶色の宝石」をキーワードに,どうすれば人類が腸内細菌を活用し,より良い社会を形成できるか,といったユニークな視点の夢溢れる内容で大いに盛り上がった。

6 神経消化器病学のこれから

このように,25年にわたるわが国での神経消化器病学の知見がまさに開花した学術集会となった(図5)。脳腸相関が言われて久しいが,神経消化器病学は決してマニアックな研究者の研究領域ではなく,「日常臨床で最も遭遇する機会の多い,ありふれた疾患」の研究である。その患者の症状を和らげ,幸せな人生を過ごすことができるのを目標とし,また,まさに今のストレスフル時代に脳⇔腸を語る,最も時代にマッチした学会であることが再認識された。

一方,神経消化器病学は敷居が高い,と感じられる医師は多いであろう。しかし,今の時代,消化器医のみならず,一般診療医も本領域を理解し診療にあたることで,より多くの患者に福音をもたらすことは明らかである。

そこで,本学会では,学会セミナーを年1回開催し,神経消化器病学の基礎をわかりやすく学べる機会を設けることになり,2023年に第3回を開催することができた。今後,一般医家が機能性消化管疾患を気軽に,そして自信をもって診療できるよう,さらなる仕組みを構築する予定である。

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