アデノウイルスはエンベロープを有さない二本鎖のDNAウイルスであり,50を超える血清型と遺伝子型が存在する。臨床症状は型に依存し,呼吸器感染症に関連するものは1〜5,7,14,21型,消化器感染症は31,40,41型が多い。結果として小児呼吸器ウイルス感染症の5~10%,小児胃腸炎の約10%がアデノウイルスに起因するとされ,年間を通じて臨床検体から分離される。一部の型は流行性に発生し,咽頭結膜熱(3型)や流行性角結膜炎(8,19,37,53,54,56型)など,特徴的な病型を呈する。通常は自然軽快する疾患であり,大部分は予後良好であるが,乳幼児や免疫不全者においては播種性感染,重症肺炎,髄膜炎,脳炎を起こしうる。比較的感染力が強く,感染対策においても重要なウイルスである。
咽頭結膜熱や流行性角結膜炎は流行状況や特徴的な所見で臨床診断が可能な場合もある。呼吸器疾患(咽頭炎,扁桃炎,肺炎),消化器疾患(胃腸炎),泌尿器疾患(出血性膀胱炎)で疑った場合は,迅速診断が検討される。
臨床現場で広く用いられるのが,迅速性のある抗原検出法である。ラテックス凝集反応,酵素抗体(ELISA)法や免疫クロマトグラフィー(IC)による抗原検出キットが市販されている。特に,最も臨床応用されているICによる抗原検出キットについては複数の検討がなされ,おおむね感度70~80%,特異度90%以上であり,臨床現場における診断に有用である。注意点として,検出検体(角結膜ぬぐい液,鼻腔吸引液,咽頭ぬぐい液,糞便)に応じて適する迅速診断キットが異なり,使いわける必要がある。
近年PCR検査などが可能となっていて,より高い感度で検出は可能であるが,一方で原因微生物としての解釈には慎重を要する(表)。
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