今回は、各種の世論調査を用いて、コロナ禍中の国民の医療満足度は、コロナ禍前に比べて低下したか否かを検証します。
過去3年間、コロナ対策で指導的役割を果たした尾身 茂氏は新著でこう書いています。「パンデミック初期には、医療関係者の貢献に対し多くの人たちが感謝の気持ちを表明した。しかし、パンデミック後期になると、医療が逼迫するのは医療界・医療関係者の努力が足りないのではないかと非難の声が聞こえるようになった」(『1100日間の葛藤』日経BP刊、2023年、278頁)。
尾身氏は控えめに書いていますが、特に2021年1月以降、現在に至るまで、一部のジャーナリズムは、日本の医療機関(病院・診療所)の多くはコロナ患者を受け入れなかったとの報道を続けています。もしそれが本当なら、コロナ禍で、国民の医療満足度は大幅に低下したと想定されます。
そこで、コロナ禍前とコロナ禍中(2020~22年)、またはコロナ禍中に複数回、医療満足度を調査した6つの世論調査の結果を調べました。それらの調査者は、日本医師会総合政策研究機構(日医総研)、厚生労働省(厚労省)、国際比較調査グループISSP、中央調査社、健康保険組合連合会(健保連)、日本医療政策機構です。厚労省調査のみは病院の患者を対象にしていますが、他調査は国民を対象にしています。いずれの調査結果もウェブ上に公開されています。
6つの調査は設問等が異なるため、結果の横断的比較はできませんが、調査ごとに、コロナ禍前とコロナ禍中の結果を比較することは可能です。以下、各調査の最新調査の実施時期順に検討します。