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【識者の眼】「新型コロナとの闘い⑤─第2波となり通常診療との両立体制を構築する」田中雄二郎

No.5186 (2023年09月16日発行) P.62

田中雄二郎 (東京医科歯科大学学長)

登録日: 2023-09-04

最終更新日: 2023-09-04

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「国立大学」は親方日の丸だから、経営の心配は要らないと思っている人が多い。2003年度までは正しかったが、04年度からは「国立大学法人」であり、学長は皆、程度の差はあれ資金繰りのことで頭を悩ませてきた。

本学も例外ではなかった。コロナによって月に12億円の赤字が3カ月も続けば大変なことになる。本学の財務担当者の見解では、20年の年末には危険水域に入り、年度末には資金運用の債権も手放して換金し、各講座から預かっている委任経理金にまで手をつけるしかないという。大学病院間でもコロナ対応の姿勢は千差万別であり、大学病院が連携して政府に陳情という訳にもいかない。

こうなると社会を動かすしかない。まず、メディアの取材を進んで受けることにした。広報の宇山恵子先生がメディア出身者で、TV仕様の動画を撮影することができ、彼女の提供する現場の映像が各チャンネルのテレビニュースに連日のように流れた。医科歯科大だけがなぜメディアに取り上げられるのかという声もあったが、このような事情だったのである。その結果、テレビの報道番組の依頼が来て、手わけして出演し、窮状を訴えることにした。弁の立つ荒井裕國副病院長(当時)がビートたけしや大竹まことを向こうに回して頑張ってくれたのはその一例である。

メディアの注目度も上がりコロナ対応病院の典型例となると、首都東京にあることは強みで、多くの有力政治家や、監督官庁の文部科学省だけでなく財務省、厚生労働省の幹部が視察に来た。国難ということで政治家たちも真剣そのもので、こちらも感染リスクを考慮しつつ極力前線を視察して頂き、医療者たちの声も聴いて頂いた。医科歯科大だけが訴えた訳ではないが、現場の生の声が政治を動かし、補助金の支給が始まった。

感染は、第1波が6月初旬には収束したようにみえたが、欧米の様子をみるとこれで終わるはずはない。本学の使命が重症患者の受け入れにあることは第1波で痛感した。たとえばECMOは7台がコロナ用に稼働できる状況にあるが、これは都立14病院が所有するECMOの総数よりも多い。実際、第1波のさなか20年5月6日の時点では、都内295医療機関の重症患者の1割が本学に入院していたし、ECMOを有する都内46医療機関のうち、その3分の1のECMO使用患者は本学にいた。

このように本学がコロナ対応に果たしていた役割は大きかったが、通常診療をいつまでも延ばしておくこともできない。コロナ重症患者を受け入れていたICUは、ビニールシートで応急処置的にコロナ用と通常診療用に分離していた。

しかし、両者の両立のために3週間、コロナ重症患者の入院を止めて、構造壁を設置する工事を行うことでゾーニングを強化し、仲間の安全を確保しつつ、コロナ重症患者の治療に専念できる環境を整備した。また外来や検査も、コロナと通常診療の両立のため、日本財団等の補助を頂いて、駐車場に強制換気機能付きCTを有するコロナ外来診療センターをプレハブで設置した。

こうしてようやく通常診療との両立態勢が整ってきたと安堵したが……。

田中雄二郎(東京医科歯科大学学長)[新型コロナウイルス感染症]

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