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特集:日常診療に潜むパーキンソン病を見逃さないためのコツ

No.5180 (2023年08月05日発行) P.18

太田浄文 (中津市立中津市民病院神経内科部長)

登録日: 2023-08-04

最終更新日: 2023-08-04

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2004年東京医科歯科大学医学部医学科卒業。神経内科専門医・指導医,認知症専門医・指導医,脳卒中専門医,総合内科専門医,医学博士。地域で神経救急から変性疾患まで広く診療。

1 パーキンソン病(PD)パンデミックの時代
・世界的にPDが激増している。高齢者人口が2042年に最大に達すると推計される(内閣府)日本では既にPDパンデミックの時代に突入しており,PDはcommon diseaseとして身近に存在している。

2 PD患者発見のゲートキーパーとしてのかかりつけ医
・PDの運動症状が先行する場合には整形外科や脳神経外科を受診することが多く,非運動症状が先行する場合には内科や泌尿器科を受診した後で運動症状が発現する。いずれの場合でも,PDを見逃さず脳神経内科受診へとつなげるゲートキーパーの役割が,かかりつけ医にとって重要である。

3 PDの非運動症状
・運動症状が先行するbrain first PDと非運動症状が先行するbody first PDがある。
・body first PDでは,ごく一般的な症状である便秘や頻尿などでかかりつけ医に通院している患者が多数みられる。「隠れPD」とも言える病態で,かかりつけ医は気づかない間にPDの非運動症状を治療している。
・非運動症状はPDに特異的なものと非特異的なものがある。非特異的な症状でも「何か変だ」と違和感を覚えるはずであり,その違和感を大事にして詳細に患者を観察して頂きたい。

4 PDに気づくための運動症状の診かた
・非運動症状のみからPDを診断することは不可能であり,診断には運動症状の確認が必須である。
・PDの四徴は,①安静時振戦,②固縮(筋強直),③無動(寡動),④姿勢保持障害,である。
・神経診察を系統的に行わなくても,ポイントを知っていればPDのスクリーニングだけの診察は容易である。

5 PD患者の非運動症状に対する薬物療法の注意点─脳神経内科が思うこと
・PD患者の非運動症状を治療する場合には,いくつか避けたい薬剤がある。
・ドーパミン遮断作用のある薬剤(スルピリド,メトクロプラミド)の使用は避ける。
・抗コリン作用のある薬剤(頻尿治療薬など)はなるべく避ける。
・MAO-B阻害薬との併用禁忌薬(抗うつ薬,トラマドールなど)もなるべく避けてほしい。

6 PD患者診療における脳神経内科専門医とかかりつけ医の連携
・PD患者の非運動症状のすべてを脳神経内科が担うことは,不可能である。
・運動症状や睡眠障害,精神症状は脳神経内科に任せて,他の非運動症状はなるべくかかりつけ医で対処することが現実的である。

7 多科連携,多職種連携によるPD診療
・PDは脳神経内科医とかかりつけ医だけでなく,多くの職種が関わってサポートしていくことで,患者に最適・最良の医療を提供することが可能になる。

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