2023年6月16日、政府の経済対策の基本方針となる「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)2023」が閣議決定されました。
孤独・孤立が生命予後に影響することが明らかになってから、先進国を中心に政府や自治体は孤独・孤立対策に力を入れてきており、「骨太の方針」でも対策が示されています。特に「骨太の方針2021」「骨太の方針2022」から引き続いて「骨太の方針2023」でも「社会的処方の活用」の文言が明記されました。社会的処方とは、「薬で人を健康にするのではなく、人と人とのつながりを利用して人を元気にする仕組み」のことで、いま英国を中心に多くの論文も発表され、世界中から注目されています。
そういった状況の中で、今回の「骨太の方針2023」では、昨年の「骨太の方針2022」と比較して変わったところがいくつかあります。その主なものを挙げてみます。
・孤独・孤立対策推進法が2024年4月に施行されることを受け、文章が全体に短くなっています。根拠法が制定されたことで、一定の成果を示したという意味合いと、今後は法に基づいての施策が中心となるという意味があると思われます。
・孤独・ 孤立対策推進本部を国と自治体に置くことが明記されました。これは法の内容にも関わりますが、孤独・孤立対策は国が主導するだけではなく、各自治体レベルできちんとやっていきましょう─っていうことが示されました。
・NPO活動について「複数年契約」という具体的な文言が入ったのは驚きです。単年度ではなく多年度展開できることで、これまで以上にインパクトが大きい取り組みが可能になることが期待できます。
・「日常の様々な分野で緩やかなつながりを築ける」と書かれているのは好感が持てます。孤独・孤立の問題は、「地域でイベントをする」「特別な場所をつくる」ことで解決されるというよりは、生活の動線上にある多種多様な場の中にこそ、人がつながれるカギがあるからです。
以上、今回の「骨太の方針2023」は2022年までのものから大きく文章が変わり、具体的かつ実践的な内容に進化してきていると感じ、未来に期待ができるものです。
一方で、孤独・孤立対策推進法が施行されることもあり、私たち医療者を含めた地域全体が、この社会における孤独・孤立の問題に目を向けていく必要が出てきています。
西 智弘(川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)[孤独・孤立対策推進法]