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脱毛症(円形脱毛症,男性型脱毛症)[私の治療]

No.5173 (2023年06月17日発行) P.49

大山 学 (杏林大学医学部皮膚科学教室教授)

登録日: 2023-06-16

最終更新日: 2023-06-13

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  • 脱毛症は毛をつくる小器官である毛包の傷害または毛周期(生えかわり)異常により生じる。前者の代表的疾患は,毛包への自己免疫応答により脱毛が生じる円形脱毛症(alopecia areata:AA)であり1),後者の例が男性ホルモン(アンドロゲン)により毛周期が加速化した結果,毛包がミニチュア化し特定部位が薄毛となる男性型脱毛症(androgenetic alopecia:AGA)である2)。女性にも前頭部から頭頂部の特定のパターンを呈する“AGA”に類似する病態があるが,薄毛のパターンが男性のAGAと異なり,アンドロゲン依存性も明らかではないため「女性型脱毛症」と呼ぶのが一般的となっている2)

    ▶診断のポイント

    特徴的な臨床像(脱毛斑の形状+脱毛パターン),抜毛テスト所見(AA:萎縮性毛根,AGA:軟毛の易脱毛性),トリコスコピー所見(AA:感嘆符毛,AGA:毛包のミニチュア化,毛幹径の不均一性など)により診断する。AAではトリコチロマニア(抜毛症)との合併の有無,頭部白癬を誤診することなど,AGAでは稀ではあるが,瘢痕性脱毛症の要素を含む脱毛症との鑑別が必要な場合もあるため,トリコスコピーなどを用いて丁寧な診察を心がける。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    AAでは急性期(炎症主体),慢性期(毛周期の遷延主体)で病態が異なる1)。脱毛症の治療では,他覚的な脱毛所見以上に個々の患者の疾病負荷を的確に評価し,個々の治療への希望に応えることも重要である。一般的には,脱毛症の病勢は脱毛面積と相関するが,脱毛部位によっては面積以上に外観に影響を与える場合もある。また,重症AAにJAK阻害薬が適応追加となったが,適応基準に加えて生物学的製剤と同様の管理が必要なため施設基準などがあり,日本皮膚科学会の脱毛症治療安全性検討委員会の適正使用基準を遵守して使用する。

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