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【識者の眼】「9版を迎えた『新型コロナウイルス感染症診療の手引き』」西條政幸

No.5163 (2023年04月08日発行) P.56

西條政幸 (札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2023-03-30

最終更新日: 2023-03-30

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行が世界や日本で確認されて3年が経過した。その1年目を国立感染症研究所(感染研)で、2〜3年目は札幌市保健所でCOVID-19対応にあたった。4年目に入ってもCOVID-19流行対策は続きそうである。

新型コロナウイルス感染症診療の手引き(第9版)」が2023年2月10日に刊行された。各医療機関、保健所等で保健行政に携わる者だけでなく、いわゆる専門家や医療関係者以外の者にとって、とても役立つCOVID-19に関する教科書のような存在だ。私は、感染研在職中の1年間だけであるが本手引きの作成委員会委員を担当させていただいた。COVID-19の特徴、臨床的特徴(病態を含む)、治療戦略、感染予防法を分かりやすく、明確に記述することが求められると同時に、新しい知見が、例えば抗ウイルス薬の適応がなされるなどがあれば、それに合わせてリアルタイムに改訂を重ねる作業も継続的になされた。行政的な手続きについても記載されるなど、とても実用的である。

公衆衛生、呼吸器内科、ウイルス学、感染症学、集中医療学、小児科学など、各領域の専門家が分担して各項目を執筆し、委員全員と厚生労働省担当者とで内容を吟味の上公表される。札幌市保健所では、私だけでなく多くのスタッフもこの「診療の手引き」を参考に作業にあたった。「診療の手引き」の重要性と有用性を体感している。

第1版(2020年3月17日刊行)から第9版までの内容の変遷を確認すると、そこには日本におけるCOVID-19流行対策のあり方が凝縮されている。これは科学的エビデンスに基づくCOVID-19に関する解説書であるとともに、歴史的価値を有する文書になると信じている。2023年5月8日からCOVID-19は、感染症法のいわゆる2類感染症相当から5類感染症に変更される。この変更に備えて大幅改訂作業がなされているのではないかと考えている。私は初期の1年目だけの関わりであったが、これまでこの手引きの執筆、作成に関わってこられた多くの方々、特に本作業の長期にわたる責任者である加藤康幸先生(国際医療福祉大学教授)に札幌市保健行政関連の職員のひとりとして感謝申し上げたい。

西條政幸(札幌市保健福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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