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【識者の眼】「マスクの着用は個人の判断? 医療従事者はどうなる?」薬師寺泰匡

No.5160 (2023年03月18日発行) P.56

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2023-03-01

最終更新日: 2023-03-01

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政府が、3月からのマスク着用に関してコメントを発表した。厚労省のホームページには、以下のような記載がある。

「令和5年3月13日以降、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねることになります。本人の意思に反してマスクの着脱を強いることがないよう、個人の主体的な判断が尊重されるよう、ご配慮をお願いします」

国が義務づけていたものであれば、義務が外れた際に変化が生まれるが、今回はもともと推奨していたものについて推奨度を変化させたという状況であろうか。これまで、義務ではないのに「外しても良い場面」を提案してみたり、熱中症リスクが不明確な状況で「熱中症予防のためにマスクを外そう」なるキャンペーンを張ってみたり、何をしたいのかがわかりにくかった。そもそも国民の大半がマスク着用をした背景は不安ではないか。当初、日本中にウイルスがまん延していたわけではなかった頃から、マスクが売り切れて買えない程にマスク着用が盛んになった。不安を背景にしている限り、すぐに社会は大きく変わらないようにも思えるが、医療機関には今後なんらかの変化が生じるであろうか?

一応、前述の厚労省のホームページでは、マスク着用が推奨される場面として、①医療機関受診時、②医療機関や高齢者施設などへの訪問時、③混雑した公共交通機関利用時、を挙げている。我々としては標準予防策の一環として、患者と接する場合にはマスク着用をしていくこととなるであろう。これに関して今後急激に何かが変わることはなさそうである。職員の患者対応時以外におけるマスク着用に関しては、医療機関側が一定のルールを設ける必要が出るかもしれない。外来患者については着用をお願いすることになるが、拒まれた時の対応については各医療機関に判断が求められることになる。

厚労省ホームーページでは、マスク着用が効果的とされる場面として、流行期に重症化リスクの高い方が混雑した場所に行く時を挙げている。ウイルスをもらわないようにという視点の記載と思われるが、マスク着用の最大の目的は、COVID-19未発症の感染者が知らないうちに他人に感染させる確率を下げることではなかろうか。元々のリスクが高ければ高いほどリスク軽減効果も高いと考えられる。ただし、今後は患者数の把握が難しくなるのは確実である。地域の流行状況、院内の患者数や外来患者数を考慮しながら、各医療機関で方針を考えるほかないだろう。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[新型コロナウイルス感染症][マスク着用]

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