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腸管ベーチェット病/単純性潰瘍[私の治療]

No.5157 (2023年02月25日発行) P.44

長沼 誠 (関西医科大学内科学第三講座(消化器肝臓内科)主任教授)

登録日: 2023-02-25

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  • ベーチェット病は,口腔粘膜の再発性アフタ性潰瘍,眼病変,皮膚病変,陰部潰瘍を主症状とする原因不明の難治性疾患である。腸管ベーチェット病とは,ベーチェット病の中で回盲部に特徴的な潰瘍を有する特殊型と位置づけられている。腸管ベーチェット病は,腹痛,体重減少,下痢,発熱などを主訴とし,重症例では穿孔・腹膜炎をきたし,手術になる例も存在する。典型的には回盲部を中心に円形または類円形の深掘れの潰瘍を呈することが特徴である。なお,回盲部の潰瘍の中で,ベーチェット病診断基準の完全型あるいは不全型の条件を満たすものを腸管ベーチェット病,それ以外で回盲部の潰瘍のみを有するものを単純性潰瘍と定義しているが,両者の病因・病態・定義については明確ではなく,実際には単純性潰瘍でも腸管ベーチェット病の治療がなされていることが多い。

    ▶診断のポイント

    ベーチェット病と診断されている患者で右下腹部痛,下痢,発熱などの症状が認められ,下部消化管内視鏡にて回盲部を中心に円形または類円形の深掘れの潰瘍が認められれば,診断はつきやすい。小潰瘍やアフタのみからなる消化管病変や潰瘍性大腸炎に類似した炎症を呈することもある。また,心窩部痛や嚥下困難の症状を伴う食道や胃病変を合併する場合もあるので,注意が必要である。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    本疾患の明確な重症度基準はないが,発熱や腸管外病変などの全身症状の有無,腹部所見(腹痛の程度,炎症性腫瘤や反跳痛の有無),潰瘍の深さや腸管合併症の有無,炎症反応,貧血の程度などから総合的に判断する。

    エビデンスの高い治療法はほとんどないが,軽症~中等症例には5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤,サラゾスルファピリジンが寛解導入に有効な場合がある。中等症~重症例には副腎皮質ステロイド,抗TNFα抗体製剤,栄養療法を行う。わが国では抗TNFα抗体製剤の中でインフリキシマブとアダリムマブが保険適用である。また寛解導入後の維持療法としては,原則寛解導入療法で使用した薬剤を使用するが,潰瘍性大腸炎,クローン病難治例の維持療法として使用されているアザチオプリンを使用することもある。ベーチェット病で有効なコルヒチンが腸管病変に対しても使用されることがあるが,有効性については一定の見解が得られていない。

    内科治療抵抗例や出血コントロール不良な症例,高度狭窄,穿孔例については外科手術が行われる。腸管ベーチェット病の再手術率は高いことから,術後はアザチオプリン,抗TNFα抗体製剤,栄養療法,あるいはこれらを組み合わせた治療により寛解維持をめざすことが必要である。

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