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特集:帯状疱疹後に残る痛みのコントロール

No.5154 (2023年02月04日発行) P.26

中川雅之 ( NTT東日本関東病院ペインクリニック科医長)

登録日: 2023-02-03

最終更新日: 2023-02-02

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1998年福島県立医科大学医学部卒業。福島県立医科大学医学部附属病院,新東京病院などを経て,2015年より現職。ペインクリニック専門医,麻酔科指導医。帯状疱疹痛に対する神経ブロック療法,脊髄刺激療法の有効性を多数報告。

1 帯状疱疹後に残る痛みとは
・帯状疱疹後に残る痛みは,「帯状疱疹後神経痛(PHN)」と呼ばれる。PHNは難治性の痛みで治癒が期待できないため,治療は薬物療法や神経ブロック療法などによる対症療法が中心となる。

2 帯状疱疹後神経痛(PHN)の疫学
・PHNは帯状疱疹の最も頻度の高い合併症で,帯状疱疹に罹患すると抗ウイルス薬を早期に使用しても,10~25%がPHNに移行する。

3 PHNの危険因子
・PHNの危険因子として,高齢,皮疹の重症度,皮疹発現時の強い痛み,前駆痛の存在,免疫抑制状態,慢性疾患の併存などが報告されている。

4 PHNの症状
・ひりひりする痛み,灼けるような痛み,電気が走るような痛み,えぐられるような痛み,痛痒さ,など。
・1人の患者にいろいろな痛みが混在する。
・痛みの強さは天気,空調,体調,心理状態に影響される。

5 PHNの診断
・皮疹の痕跡がないと診断は難しい。
・痛みや知覚異常の範囲は,帯状疱疹に罹患した神経の支配領域と一致する。
・PHNの痛みの強さが徐々に増強している場合や,一度痛みが治まっていたのに再び痛みだした場合は,他の疾患による痛みではないかの精査が必要である。

6 PHNの治療
・PHNの治療の基本は薬物療法で,ガバペンチン,ミロガバリン,アミトリプチリンが有効であるが,副作用のため使用できないこともある。
・副作用を減らすため,少量から開始して,ゆっくり増量する。
・神経ブロック療法や脊髄刺激療法はエビデンスレベルの高い報告はないが,有効な症例もある。
・PHNに有効とされる特異的な理学療法はないが,慢性疼痛の軽減のためには,継続可能な運動を生活の中に取り入れることが大切である。

7 日常生活の注意点
・趣味に使う時間を多くするなど,痛みを意識しない生活を心がける。
・PHNの痛みには強弱の波はあるが,悪化することはない。
・夜間の痛みは気になることが多いため,我慢させずに薬物療法を行う。

8 PHNの予防
・痛みに対する早期治療が大切である。
・帯状疱疹が発症したら,皮疹の治療とともに,神経痛に対する治療も行う。
・PHNの最も有効な予防策は,帯状疱疹にならないこと。50歳を過ぎたらワクチン接種が効果的である。

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