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【識者の眼】「敗血症とCOVID-19患者の家族がコロナ禍に集中治療室で経験する意思決定」舘 昌美

No.5153 (2023年01月28日発行) P.62

舘 昌美 (独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院看護部救命救急センター急性・重症患者看護専門看護師)

登録日: 2023-01-23

最終更新日: 2023-01-23

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新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が猛威を振るった当初、集中治療を受ける患者らは感染予防のため家族との面会が叶わなかった。そのため、面会制限に対し、電話やリモートで患者の容態を伝えるなどの工夫が行われた。

「日本版敗血症診療ガイドライン(J-SSCG)」には、患者・家族中心のケア(patient-and family-centered care)の章がある。その中の「CQ20–5:ICU(集中治療室)における家族の面会制限を緩和するべきか?」では、弱く推奨する(GREADE:2D)とある。実際コロナ禍を振り返ると、敗血症やCOVID-19で生命危機にある患者に会えない家族や、面会させてあげられない葛藤で現場の医療者も、辛い経験をした。

第3波頃までCOVID-19重症患者は、終末期であっても家族の面会制限があった。最期まで面会できなかった家族は、その苦痛からグリーフケアが進まず、患者の死を受け入れられないことがある。一方、集中治療前に患者が電話で家族にメッセージを伝えられた事例では、遺族は患者を看取った後も救命救急センターに足を運ばれ、患者と最期の会話ができたことを感謝された。たとえ限られた時間であっても、患者と会話したり触れたりして共に過ごす時間は、家族にとってはかけがえのないものである。

敗血症などでは、集中治療の強化や継続を家族と医療者が話し合うことがある。家族は患者に代わり、これまでの患者の生活や考えを推し量り、重要な選択をしなければならない。治療の継続が効果よりも侵襲が強いと考えられるとき、治療の撤退を選択した家族は、患者に苦痛を与えたくない一方で患者の死を予期し苦悩する。「この選択でよかったのでしょうか」と問う家族を面会制限下で支援するのは、看護師の重要な役割である。

舘 昌美(独立行政法人地域医療機能推進機構中京病院看護部救命救急センター急性・重症患者看護専門看護師)[新型コロナウイルス感染症]敗血症の最新トピックス

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