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【識者の眼】「地域住民における新型コロナウイルス感染症の後遺症の実態は?」北村明彦

No.5153 (2023年01月28日発行) P.62

北村明彦 (八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)

登録日: 2023-01-06

最終更新日: 2023-01-06

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年末年始の休暇シーズンも「有事」体制で臨む保健所に身を置きながら、コロナ禍の4年目を迎える2023年こそは対策の「平時」への移行を願う。

厚生労働省が12月21日に公表した新型コロナウイルス感染症の重症化率や致死率の最新値をみると、オミクロン型が主流となった7〜8月の感染者の重症化率、致死率はともに季節性インフルエンザと大差がないことが明らかとなった。ただし、感染症法上の5類等への変更判断はこの数値のみでは不十分とされ、今後出現する変異株の感染力、合併症、後遺症、ワクチンや治療薬の効果等を加味してのリスク評価が必要となろう。

後遺症の症状、程度、持続期間は、人種や変異株の種類により異なる可能性があるが、わが国の「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)診療の手引き 罹患後症状のマネジメント 第2.0版(2022/10/14)」に示されている日本人の結果では、診断12カ月後でも罹患者全体の30%程度に1つ以上の罹患後症状が認められ、頻度が高い順に、疲労感・倦怠感(13%)、呼吸困難(9%)、筋力低下(8%)、集中力低下(8%)等と記されている。

同手引きには、非罹患者と比較した研究として海外の2研究が掲載されているが、2022年10月の日本公衆衛生学会総会では、北海道大学公衆衛生学教室が札幌市で実施した感染者約3700人、非感染者約4300人の比較研究の結果が報告された。それによると、最も頻度が高かった罹患後症状は疲労であり、非感染者との頻度比が最も高かった症状は嗅覚障害、次いで味覚障害であった。

私が勤務する八尾市では、国立国際医療研究センターとの共同研究事業として、性・年齢・居住地区をマッチさせた厳密な症例対照研究デザインにより、2021年3月〜22年4月の新型コロナウイルス感染者5〜79歳の市民約1万7500人と非感染者約1万7500人の計約3万5000人に対する調査を11月に実施し、市民の協力のもと全体で約35%の比較的高い回収率を達成した。罹患後症状について、オミクロン株とそれ以前の変異株との比較、小児から高齢者までのライフステージ別の相違、性差、基礎疾患、生活習慣、ワクチン接種状況や治療との関連など種々の観点から分析を行い、今年度末を目処に厚生労働省へ結果報告が行われる予定であり、その結果が待たれる。

北村明彦(八尾市保健所健康まちづくり科学センター総長)[新型コロナウイルス感染症]

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