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【識者の眼】「改訂版医学教育モデル・コア・カリキュラムと地域医療」松村真司

No.5146 (2022年12月10日発行) P.64

松村真司 (松村医院院長)

登録日: 2022-12-01

最終更新日: 2022-12-01

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先に紹介した通り1)、本年11月18日に医学生・歯学生が卒業時までに身に付けておくべき必須の実践的診療能力(知識・技能・態度)に関する学修目標等を示した2022年度改訂版の医学教育モデル・コア・カリキュラム(以下、新コアカリ)が文部科学省のホームページに公表された2)。 まずはこの膨大な改訂作業に携わった多くの関係者の尽力に改めて感謝の意を示したい。また、今回新コアカリの全文がダウンロードでき、さらにはPDF化されたことによって、項目ごとのタグ付けや検索機能の付与など、参照を容易にする工夫が随所に盛り込まれている。そのため、全295ページの大部ではあるが、大変利用しやすいものになっている。

新コアカリのキャッチフレーズ「未来の社会や地域を見据え、多様な場や人をつなぎ活躍できる医療人の養成」は、医歯薬学教育の各領域共通のものである。冒頭には2040年以降の未来の医療人を想定し、これらに共通して求められる基本的な資質・能力として10項目が記載されている。今回、新たに追加された項目は「総合的に患者・生活者をみる姿勢」と「情報・科学技術を活かす能力」の2つである。さらに、この10項目と関連した学修目標を記載した上で、「習得すべき疾患」「主要症候」等が一覧表示されている。さらに、学修方略・評価法まで含めた具体的なカリキュラムが例示されている。今後、各大学のカリキュラムが新コアカリに沿って順次改訂されていき、やがてこれらに基づいた教育を受けた新しい世代の医療人が現場に現れてくることになる。

新コアカリのキャッチフレーズ内に既に「地域」という言葉が入り、また新設された「総合的に患者・生活者をみる姿勢」の項目の中には「地域の視点とアプローチ」という学修目標が設定されている。さらには、新コアカリ自体が教育の場が多様化していくことを強く意識した内容になっており、これまで以上に地域の医師が能動的に医学教育に関わることが求められている。今回のコアカリには、オンライン教育のような新しい学修方略や、様々な評価方法を含む教育理論に関する記載もあり、私のような地域の診療所の医師にとっても大変有用な内容になっている。大学関係者だけではなく、多くの地域の医療者がこの内容を参考に、未来の医療者の育成に携わることを希望するところである。

【文献】

1)松村真司:医事新報. 2022;5118:57.

2)文部科学省:医学教育モデル・コア・カリキュラム(2022年度改訂版).

   https://www.mext.go.jp/content/20221118-mxt_igaku-000026049_00001.pdf

松村真司(松村医院院長)[未来の医療人]

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