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【識者の眼】「薬の処方日数」島田和幸

No.5145 (2022年12月03日発行) P.59

島田和幸 (地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)

登録日: 2022-11-25

最終更新日: 2022-11-25

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わが国の外来受診頻度はずば抜けて多い。その原因か結果か、慢性疾患に対する1回当たりの薬の処方日数が短い。実は、特定の薬剤を除いて処方日数の制限は既に撤廃されており、医師が適正と判断すれば何日分処方してもよい。しかし、保険審査委員会が90日分以上は不適と査定する可能性が高い。そこに、今年の診療報酬改定でリフィル処方が解禁された。「3時間待ち3分診療」の病院は、既に90日長期処方が行き渡っている。一方、元々処方日数が病院より短い診療所ではリフィル処方はほとんど行われていない。

外来患者の中で多数を占める高血圧は、薬物による降圧療法が有効なことが海外で実施された厳格なプラセボ対照大規模臨床試験で確かめられている。数年間にわたる試験中の受診回数は半年か1年に1回くらいである。海外では実地診療でも薬をボトルで患者に渡している。一方、わが国の患者は、数週間ごとに受診して、その都度何種類もの薬を大きな袋に沢山入れて持ち帰っている。

実際のところ、高血圧や脂質異常症などの外来通院の多くは、同じ処方が延々と繰り返されており、患者自身を含めて、どの関係者も受診回数はもっと減らせると内心思っているのではないかと推察する。これは、医療機関にとっては医療収入減になるかも知れないが、むしろ貴重な医療資源の有効利用という大局的観点に立つことのほうが重要である。他方で、長期間医師の診察なしに投薬のみ続けることに不安があるのも事実である。医師と協働して積極的に患者のフォローに関わる「かかりつけ薬剤師」の制度が成熟してくるとそれにも対応できよう。「医薬分業」の真の目的は、調剤のみの「門前薬局」の林立ではなく、新しい地域包括型の医療提供体制ではなかったか。

薬の処方日数に関しては、現状では、現場の医師の自由な判断ではなく、各地の保険審査委員会がそれぞれに処方日数限度ひいては受診回数を決定している。少なくとも、純粋医学的に妥当と考えられる受診頻度をアカデミアサイドの学会などが提示し、それを中心にして、薬剤師も交えた関係者が制度設計していくのが望ましいのではないか。

島田和幸(地方独立行政法人新小山市民病院理事長・病院長)[リフィル][保険審査][かかりつけ薬剤師]

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