蕁麻疹は日常診療でよく遭遇する疾患であり,瘙痒を伴った一過性の浮腫性紅斑や膨疹が出没を繰り返すことを特徴とする。蕁麻疹の誘発機序としてはI型アレルギーが広く知られているが,実際には原因となる抗原を同定できることは少ない。
蕁麻疹はその病型によって治療方法や予後,日常生活における対処の仕方が大きく異なるため,正しい病型診断が重要である。
詳細な病歴聴取を行っても特定の誘因なく自発的に膨疹が出現していることが判明した場合は,特発性の蕁麻疹と判断する。皮疹の形は様々で,地図状や環状の膨疹が毎日のように出没する。多くは数十分~数時間以内に消退し,個疹が数日持続することは少ない。医療機関を受診する蕁麻疹の中では最も多い。
特定の刺激により症状が誘発されるもので,症状は刺激の有無により1日のうち何度も出没することもあれば,数日~数カ月間現れないこともある。アナフィラキシーショックを呈するものも含まれる。アレルギー性の蕁麻疹は蕁麻疹患者全体に占める割合としてはかなり低い。
蕁麻疹の治療の基本は,原因・悪化因子の除去・回避と薬物療法である。ただし,一般には皮疹を誘発可能な蕁麻疹では誘発因子の同定と回避が中心であるのに対し,特発性の蕁麻疹では薬物療法が中心となる。
薬物療法では抗ヒスタミン薬が蕁麻疹の基本的治療薬であり,特に鎮静性の低い第2世代抗ヒスタミン薬が第一選択として推奨される。なお,抗ヒスタミン薬の効果には個人差があり,1種類で十分な効果を得られない場合でも,ほかに1~2種類の抗ヒスタミン薬を追加・変更したり,ある程度効果のあった抗ヒスタミン薬を増量することで効果を期待できる。特発性蕁麻疹で症状が激しく(数日以上),症状の軽減まで待てない場合や,投薬によっても十分な症状の制御が得られない場合は,「蕁麻疹診療ガイドライン2018」1)に従い,H2受容体拮抗薬,抗ロイコトリエン薬を併用し,適宜その他の補助的治療薬を併用する。それでも強い症状が続く場合,ステロイドの内服,オマリズマブまたはシクロスポリンにより症状を制御する。
残り780文字あります
会員登録頂くことで利用範囲が広がります。 » 会員登録する