多囊胞性卵巣,男性化徴候,無月経もしくは希発月経を主要徴候とし,肥満やインスリン抵抗性などの内分泌や代謝の異常も高頻度に合併する。
日本産科婦人科学会の診断基準(2024)では,①月経異常,②多囊胞性卵巣,③アンドロゲン過剰症または黄体形成ホルモン基礎値高値かつ卵胞刺激ホルモン基礎値正常,の3項目を満たす場合に診断する。臨床像には民族差があり,わが国では諸外国と比較して男性化徴候や肥満を認める患者の割合が低い。
挙児希望の有無に応じて定期的な排卵もしくは消退出血の回復をめざす。肥満症例では代謝症候群の予防・改善を期待して,まずは5~10kg程度の減量を勧める。特に挙児希望がある患者では,妊娠前からの体調管理が周産期合併症のリスクを低減することを指導する。また不安やうつなどの精神症状の合併や,子宮体癌のリスクが上昇することが報告されているため,代謝症候群とともに適宜これらのスクリーニングを行う。
挙児希望がない患者では周期的なプロゲスチン投与により消退出血を誘発し,恒常的なエストロゲン刺激による子宮内膜癌の発症を予防する。また,男性化徴候を示す患者ではアンドロゲン低下作用も期待して低用量ピルを処方する。
挙児希望がある患者ではクロミフェンやアロマターゼ阻害薬内服により排卵を誘発する。肥満,耐糖能異常やインスリン抵抗性を認める症例ではメトホルミンの併用を検討する。内服薬やゴナドトロピン療法に抵抗性の場合には腹腔鏡下卵巣多孔術も選択肢となるが,その治療効果は数カ月で消失することが多い。また,ゴナドトロピン療法を行う場合もある。使用にあたっては十分なインフォームドコンセントを行うことが重要である。
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