私は,介護保険制度が施行された2000年に,愛媛県で初めての在宅専門クリニックを開業しました。その当時は,全国的にも在宅専門クリニックはめずらしく,開業時の厚生支局への開業申請を行うにも,外来患者を受けるための施設や人的体制を整える必要がありました。つまり,入院や外来を行わず,在宅医療だけを専門に行うクリニックは行政にとっても「想定外」だったわけです。
その後,都会を中心に在宅専門クリニックが増えてきましたが,状況は変わりませんでした。徐々に在宅医療が普及していくにつれ,既存の「かかりつけ医」から在宅患者を奪う存在として,「在宅専門クリニック」を非難する声も出てきました。「かかりつけ医vs.在宅専門クリニック」論争です。在宅専門クリニックが自分が都合のよい患者ばかりを診たり,施設に訪れ短時間で多数の患者を診ているとか,24時間の対応をせずに,状態が悪くなったら自分で診療せずに救急搬送する等々です。在宅専門クリニックにも患者に誠意を持って,重症患者や看取り患者を大切に診ているクリニックもあれば,いい加減なクリニックもあります。そして,それは,かかりつけ医も同じです。
「かかりつけ医」とか「在宅専門クリニック」というレッテルだけで判断するのはおかしいと思うのです。