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新生児黄疸(新生児高ビリルビン血症)[私の治療]

No.5135 (2022年09月24日発行) P.50

甘利昭一郎 (国立成育医療研究センター周産期・母性診療センター新生児科)

登録日: 2022-09-21

最終更新日: 2022-09-20

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  • 生後,体内にビリルビンが蓄積し,皮膚や眼球結膜の黄染をきたす病態である。生後早期は,胎児赤血球の代謝に伴うビリルビン産生が,肝臓でのグルクロン酸抱合や排泄を上回るため,間接(非抱合型)ビリルビン優位の高ビリルビン血症がほぼすべての児に生じる(生理的黄疸)。

    種々の要因でビリルビンの蓄積が生理的範囲を超えることがある(病的黄疸)。異常な高ビリルビン血症が持続すると,ビリルビンが血液脳関門を越えて神経毒性を発揮し,ビリルビン脳症(核黄疸)を引き起こすため,適切な検査と治療が必要である。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    生理的黄疸は日齢2~3頃から出現し,日齢4~6頃に最大となり,その後はしだいに消退する。

    生後早期は生理的多血で皮膚の赤みが強く,黄色というよりは赤橙色に見える。多血が改善して赤みがとれていくと,ビリルビン値が低下していても黄色さがむしろ目立ってくることがある。目安として,①早発黄疸,②24時間の総ビリルビン値の上昇速度が5mg/dL以上,③生後72時間以後の総ビリルビン値が正期産児で17mg/dL以上,早産児で15mg/dL以上,④遷延性黄疸,⑤直接ビリルビン値が2mg/dL以上,の場合を病的黄疸と呼ぶ。

    病的黄疸でも,皮膚や眼球結膜の黄染以外に症状がないことは多い。

    神経症状としてPraaghの病期分類が知られている。Ⅰ期の症状(筋緊張低下,嗜眠傾向,哺乳力の低下など)は非特異的であるが,見逃さず,迅速に対応したい。

    生後24時間以内の可視黄疸を早発黄疸と呼ぶ。ビリルビン脳症の発症リスクが高いため,注意を要する。生後2週間以上続く可視黄疸を遷延性黄疸と呼ぶ。

    【検査】

    治療の要否は血中総ビリルビン濃度で判断する。「村田・井村の基準」1)や「中村の基準」2)がよく用いられる。

    アンバウンドビリルビン(アルブミン等の蛋白と結合しておらず,血液脳関門を容易に越えて神経毒性の主体となる)を測定できる場合は,総ビリルビン値とアンバウンドビリルビン値の双方に基づいて治療適応を判断する。「中村の基準」2)や「森岡の基準」3)が用いられる。

    ほかに問題のない後期早産児や正期産児では,経皮黄疸計をもとに血液検査の実施を判断することが一般的である。生後数日は1日2~3回,その後は1日1回の測定で,「測定値+1~3mg/dL(施設による)」が上記の基準を超えた場合に,血液検査を実施する。治療の要否は,必ず血中ビリルビン濃度に基づいて判断する。特に早発黄疸の場合や,光療法(光線療法)の実施中・実施後は,経皮黄疸計の値は血中ビリルビン値に比して低値になりやすいので,注意を要する。

    黄疸の増強要因として,早産,低出生体重,small-for-gestational age,多血,授乳量不足,排便不良,閉鎖性出血(頭血腫,帽状腱膜下出血,皮下出血など),感染症,血液型不適合,家族歴(同胞の黄疸,遺伝性溶血性貧血など)に留意する。

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