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【識者の眼】「働き方改革と自治体病院の経営形態」邉見公雄

No.5135 (2022年09月24日発行) P.57

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2022-08-31

最終更新日: 2022-08-31

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8月25日と26日の2日間、高松市で全国病院事業管理者・事務責任者会議が開催された。今年は久し振りに全員現地の計画だったが第7波の襲来で断念。和田大助当番世話人(高松市病院事業管理者)からの報告によると現地参加60名強、オンライン参加150名強の220名余りの盛会となった。私は、全自病会長時代はほぼ毎年、以前の小山田会長時代の数年間は代理として数回、この会へは6割前後の出席率である。

この協議会は、病院規模の大きい県立病院群でスケールメリットを持つ兵庫県や島根県、福島県などを中心に、鹿児島市立病院で繰入金を除外した実質医業収支重視で実績を上げた武弘道氏が2002年に立ち上げた。武氏は、土屋埼玉県知事(当時)から大きな赤字を出し続ける県立病院の再起に呼ばれ、人事や予算の案件に自由度を持つ事業管理者に就任し成功を収めた方。その後、川崎市に移り成功しつつあった時に不幸にして病魔に倒れられた。2代目には離島の多い長崎県立病院の矢野右人先生が就任。そして現在は、精神科単科病院と沈滞していた県立中央病院を再興された吉田茂昭青森県立病院事業管理者が会長である。

この間、島を多く抱える沖縄県なども加入し、県庁所在地の市民病院なども参加しはじめた。日進月歩の医療や朝令暮改の診療報酬改定などへの対応は本庁からの指示待ちではスピード感に欠け、デメリットが多くなってしまうからである。今、自治体病院の中で病院数は44.5%、病床数では優に5割を超える最大集団になっている。今回のコロナ禍では、補助金がなかった第1波や第2波の時にも病院数で全体の10%余、病床数でも20%位の自治体病院は、30%余りの入院患者と50%以上の重症者に対応した。まさに地域医療の砦である。それにより改革プランは強化プランへと姿を変えた。

働き方改革であるが、全適病院の多くはプランAをめざし、連携Bを予定しているとの報告があった。独法病院は、自治体がバックで財政力もあるのに応分の負担をしていなかったところや医療資源の潜在力があるところに多く、これもどうにかなりそうな感じである。

そうなると、働き方改革にほとんど手を付けられない中小の一部適用病院から医師の流出が起き、人口3万〜6万人位の中小公立病院は大都市民間病院グループの傘下に入るか、ダウンサイジングして診療所や介護重視の介護医療院化するのかも。今後の国保診療所学会や自治体病院学会での議論を注視していきたい。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[医師の働き方改革]

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