局所性ジストニアである眼瞼痙攣を主要な症状としつつも,それに顔面や下顎・舌・咽頭・喉頭・頸部といった隣接部位のジストニアを合併した病態で,より範囲の広い分節性ジストニアとして理解される。
閉瞼に関わる顔面筋の不随意な収縮により,随意的な開瞼に支障をきたす病態が眼瞼痙攣であり,軽症では瞬目の増加がみられる程度だが,重症では持続的な筋収縮による強制閉眼をきたし,開瞼困難のため日常生活に多大な支障をきたす。しばしば眩しさで症状は増悪し,暗所で軽快する。メージュ症候群では,さらに他の顔面筋や下顎,舌などのジストニアを合併し,顔をしかめる,口角を横に引く,口を尖らせる,閉口や開口する,下顎を前後方向や水平方向に動かす,舌を突き出すといった不随意な動きが観察される。
眼瞼痙攣では上眼瞼の皮膚を軽く触ることで不随意な閉瞼筋の収縮を抑制できることがあり,ジストニアでみられる感覚トリックの一種と考えられている。
閉眼に関わる筋の不随意収縮がないにもかかわらず,両側性に上眼瞼挙筋の収縮が生じないために開瞼困難となる状態を開瞼失行と呼ぶが,メージュ症候群に合併して観察されることがあり,ジストニアと同様の病態とされている。
口舌ジスキネジアと言われるような,口をもぐもぐさせたり舌を出し入れしたりするような運動を伴うこともある。
特異的な検査はなく,臨床所見から診断する。
眼瞼痙攣については軽瞬,速瞬,強瞬を行わせ瞬目に障害がないかを判断する随意瞬目試験が有用とされている。
抗精神病薬,ベンゾジアゼピン系・チエノジアゼピン系薬剤などの長期服用が原因となることがあるので,内服歴を確認し,該当する場合にはまず,その減量ないし中止を考慮する。
背景に器質性神経疾患が存在し,症候性にメージュ症候群をきたす場合もあるので,背景疾患の検討も重要である。
上記に該当しない本態性のメージュ症候群では,発症における環境的な要因の関与が示唆される症例もあるが,治療の根本は対症療法である。
現在の治療の第一選択はA型ボツリヌス毒素の筋注であるが,本治療を行うためには,施術医は講習・実技セミナーを受講し,修了証を取得しなければならない。また,施行時には患者登録が必要である。
一般臨床の場ですぐにボツリヌス治療にアクセスするのが難しい場合,症状が比較的軽微であれば,まずは内服治療を試みるという選択もある。内服治療の有効性は低いとされているが,著効する症例も存在する。
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