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くも膜下出血[私の治療]

No.5129 (2022年08月13日発行) P.44

大川将和 (京都大学大学院医学系研究科・医学部脳神経外科)

宮本 享 (京都大学大学院医学系研究科・医学部脳神経外科教授)

登録日: 2022-08-13

最終更新日: 2022-08-09

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  • くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage:SAH)は,文字通りくも膜下腔へ出血した状態であり,外傷,脳血管障害(脳動脈瘤,脳動静脈奇形,もやもや病,海綿状血管腫など),脳腫瘍など様々な病態で起こりうる。一般的に,単にSAHといった場合は,脳動脈瘤破裂によるものを指すことが多い。以下では脳動脈瘤破裂によるSAHについて取り扱う。

    ▶診断のポイント

    典型的には,激しい突然の頭痛で発症し重症の場合は意識障害を伴う。多くの場合,単純CTでSAHの有無は診断可能であるが,時に少量または時間経過でSAHを認めない場合があり,MRI/腰椎穿刺が必要な場合がある。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    SAHの最も大事な治療のポイントは再破裂を防ぐことである。病院に到着した時点では,通常動脈瘤は自然な一時止血が得られている。一時止血が起こるまでの時間が長いほど重症となる。この状態では,血圧の上昇などによって容易に再破裂が起こりうる。再破裂は死亡率が著しく上昇する。ゆえに,来院時から(CTで診断がつく前から)患者の状態は厳重に観察すべきである。

    SAHが疑われる場合,ベッド上安静とし著しい高血圧の是正を行いながら厳重な観察のもとでCTに移動する。CTで診断がついたら,直ちに厳重な血圧コントロール,鎮痛,鎮静を行う。前述のように,SAHは激烈な頭痛を伴っていることが多く,鎮痛,鎮静を同時に行わないと降圧できないことがしばしばある。施設によっては,この時点で全身麻酔を導入する。

    血圧が安定した状態でCT血管造影/DSA(digital subtraction angiography)を行い,動脈瘤の局在,形状,サイズを確認し再破裂のための治療(クリッピングまたはコイリング)を行う。

    【外科的治療】

    動脈瘤の部位,形状,サイズにより外科的なクリッピング術,もしくはカテーテル治療のコイリングを選択する。クリッピングは,開頭を行い,動脈瘤を手術顕微鏡下に露出しチタン製のクリップで動脈瘤の頸部を挟み,瘤内血流を遮断する。コイリングは,大腿動脈から経皮的にカテーテルを挿入し,動脈瘤内にプラチナ製のコイルを充塡し瘤内を血栓化させる。

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