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【識者の眼】「メンタルヘルスの現場から見た労働市場:ギグワーカーの世界」岩﨑康孝

No.5126 (2022年07月23日発行) P.61

岩﨑康孝 (四谷いわさきクリニック院長)

登録日: 2022-07-01

最終更新日: 2022-07-01

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コロナ前から急速に働き方が変わった感じがありました。その中で、今回は「ギグワーカー」についてお伝えします。

ギグワーカーは、「あまり専門性の高くない単発の仕事」を「請け負う」人のことを言います。

国内全体の人数としては、100万人を超える規模になっています〔2020(令和2)年※1〕。

「フリーランス」や「アルバイト」とはちょっと違うニュアンスです。また、「短期派遣(30日以内、かつての“日雇い”)」は現在では違法となっています。

たとえば、「来月は、10日くらい働くつもりです。仕事はネット上で予約しています。その10日の仕事の内容、勤務先、依頼元はほぼバラバラです」といった具合です。飲食店の出前を請け負う「Uber Eats」が有名ですが、他にも、データ入力、コロナワクチン関連、倉庫整理、試験監督、運送業、イベントや会議の受付等、仕事の種類は様々です。

企業からすれば必要な時のみに都合良く雇うことができます。もちろん、雇用の安定性やキャリア形成から問題視する見方もあります。新聞論調はむしろそちらです。

ただし、このような働き方をなさっている方とお話をする際に、悲壮感を感じることは不思議とありません。むしろ肯定的な方が多いです。

満足度の高い理由は

①「自分で仕事を選んでいる」という感覚。

②嫌なことがあっても「一日で終わる」。

③他の仕事や活動の邪魔をしない働き方。

④様々な好みを反映している(「職場の人間関係に煩わされたくない」「月々で働きたい日数が異なる」「週5日ではなく、毎週1〜2日程度働きたい」「責任を負いたくない」等)。

といったところでしょうか。

前提として、ギグワークのみを生業としている方が少ないことがあります(事業者の調査では5%※2)。

働きたいという意思があっても、何らかの理由で就ける仕事が当面見つからない方や、仕事のトラブルを契機に退職した方等は、他の働き方に比べて社会復帰のハードルが低いので利用しています。

面白いのは、ギグワーカーの方は仕事の話をより積極的になさいます。それで、こちらも聞き入ってしまいます。時には、アプリではなく職場で知り合って新しい仕事を紹介されるようなこともあります。必ずしも人とのつながりが嫌な人がギグワークするわけではないのだなあと思います。

次回は、「不動産管理業の世界」をお伝えします。

※1  日本のギグワーカー100万人増 20年上半期(令和2年(2020年)、6月23日、日本経済新聞).

※2「タイミー調べ」 https://corp.timee.co.jp/news/detail-278/

岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]

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