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【識者の眼】「手探りで始めた病院の面会制限解除」薬師寺泰匡

No.5120 (2022年06月11日発行) P.55

薬師寺泰匡 (薬師寺慈恵病院院長)

登録日: 2022-06-01

最終更新日: 2022-06-01

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コロナ禍で、院内での伝播を防ぐ目的に患者の面会制限をしている施設が多いのではないだろうか。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)と診断され、隔離解除前に死亡すると、基本的には隔離状態のまま棺に入れられ、家族と面会が可能になるのは火葬後となる。感染防御、伝播の拡散の面から考えると仕方ない部分もあるかもしれないが、COVID-19以外の理由で入院している場合においては、完全に皺寄せが行っている状況である。重篤な病態に陥り、生命の危機に晒されている場合でも面会を禁じられる場合もあるだろう。

当院には療養病棟もあり、長期の入院になったり、そのままお看取りになったりすることも多々ある。できる限り面会制限はかけたくなかったが、感染の波がくるたびに面会の制限をかけ、患者とスタッフ以外は病棟への立ち入りを制限してきた。ただ、これまでは病院周辺地域で感染者が数日発生しない状況まで流行が落ち着いた段階で、制限を解除してきた。

今年に入ってから、感染者の増減はあるものの、完全に落ち着く気配はなく、また社会は完全に落ち着けるつもりもなくなってきたのではないかと感じている。当院が立地する岡山では第6波が2022年1月に始まったが、以来面会制限を続け、再会するのは退院時のみという状況である。病状説明は外来で家族のみ、病棟では本人のみを相手にすることを続けてきた。電話やビデオ通話を駆使して面会の代わりとしていただく場合もあるが、なかなかコミュニケーションが難しい患者もおり、完全な代替手段とはならない。

院内の重篤化の恐れがある患者に感染しては、大変な事態になる。しかし、どうにか感染対策をしながら、面会制限を撤廃していかねば、出口が存在しない状況と化してきている。そこで、少しずつ面会制限の解除を行う方針を立てた。一度に面会制限を撤廃すると病棟を出入りする人の管理が行き届かなくなるので、面会可能な時間帯と人数を定め、管理下に病棟スタッフと同様の感染対策をしてもらった上での面会をしてもらうこととした。集中治療室であればスタッフの比率から面会者の管理は比較的やりやすくなるが、病棟スタッフが少ない環境では、1日に何人も対応することは困難となる。どの程度の人数ならば対応可能か現場の声を聞き、現状では各病棟1日1組15分以内(病院側から家族を呼んだ場合はこの限りではない)というルールのもとに運用を開始した。手探りではあるが、コロナと上手に付き合っていく時期がきている。

薬師寺泰匡(薬師寺慈恵病院院長)[感染対策]

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