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【識者の眼】「第115回歯科医師国家試験合格率61.6%という現実と将来の歯科医師の養成」槻木恵一

No.5114 (2022年04月30日発行) P.65

槻木恵一 (神奈川歯科大学副学長)

登録日: 2022-04-06

最終更新日: 2022-04-06

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第115回歯科医師国家試験の合格発表があった。歯科医師国家試験は、10年前くらいより合格者の人数がおおよそ約2000人で推移しており、その人数に調整するため必修以外の一般問題の合格基準が毎回変動する特徴がある。私が受験した頃の合格基準は60%であり、それをクリアすればすべての受験者が合格した時代とは大きく異なっている。第115回の結果は、受験者3198人中1969人が合格したので合格率は61.6%であった。国家試験浪人の数も1000人を超えている。

現在歯学部教育では、臨床実習に関連し共用試験が実施されている。これは、CBT、OSCE、Post-CC Pxからなり、患者を扱うにあたり知識・技能・態度を測定し、能力的に資格のある学生を認定して臨床実習を受けさせている。一方で、歯科医師国家試験では約60%しか合格しておらず、共用試験で問題がなく歯科医師国家試験に落ちるということは、試験の目的が違うとはいえ腑に落ちない。

歯科医師国家試験の合格率が抑制されているのは、歯科医師過剰の問題を受けてのことは明らかであるが、地方では新規開業より廃業歯科医院の数のほうが多い県なども散見されるようになっている。歯科医師が多いのは東京などの歯科大学が複数ある都市部であり、問題は歯科医師の偏在と言える。

歯科医師の役割は、口腔疾患の予防や治療であるが、歯周病では様々な全身疾患への影響が認められており、歯科医療としての業務はむしろ拡大しており、過剰な時代は終わっている。しかし、歯科医院とコンビニでは機能がまったく異なるわけで比較対象とならないはずだが、「コンビニより歯科医院は多い」と揶揄され、このフレーズがものすごく受け入れられてネガティブなイメージが色濃く残っており、歯学部への受験生の減少につながっている。18歳人口が今後も減少していくことは明らかであり、歯科医師過剰というネガティブキャンペーンもあり、歯学部は非常に厳しい環境に置かれている。

将来の歯科医師の養成について真剣な政策的議論が必要であり、早急な施策展開が望まれる。自立した歯科医師の養成には10年はかかるため、間に合わなくなる。

槻木恵一(神奈川歯科大学副学長)[医科歯科連携][歯科医師養成]

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