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【識者の眼】「メンタルヘルスの現場から見た労働市場(コールセンターの世界)」岩﨑康孝

No.5114 (2022年04月30日発行) P.63

岩﨑康孝 (四谷いわさきクリニック院長)

登録日: 2022-04-06

最終更新日: 2022-04-06

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患者さんの職業で、増加していると感じる領域のひとつが「コールセンター」です。もちろん疾病によりますが、現場の感覚では、短期間で症状が改善し治療終了となる方が、なぜか多い印象があります。

コールセンターとは、ご承知の通り「電話」を用いて行う顧客への物やサービスの販売や各種の問い合わせに対応する施設や組織を言います。

最近は、インターネットでの商品購入が増えた一方で、その事後対応としてのコールセンターのニーズが増えています。コールセンター業の売上高の統計では、増加率が年5〜6%、市場規模は1.2兆円程度です※1。就業者は25.7万人(2015年国勢調査)です。データが少し古いことと、コールセンターを内製化している企業もあることを考え合わせると、実態はさらに大きいのではないかと思います。

顧客がわからないことを尋ねてくる場面が多いため、担当者も即答できず調べて回答します。その過程でバックオフィスと相談することも多く、内部の良好な人間関係が鍵となります。勤務先が「コールセンター」である場合、「クレーム処理が大変」ではないかと、初めは思っていました。しかし、実際には内部の人間関係を苦にされる方が多いです。

他の業界とは異なり、いきなりOJTはありません。現場に配属される前のトレーニング(座学)は必須です。これをクリアしないと現場へのデビューができない場合もあります。チームプレーではあるものの、デビュー後はスタッフ個々に厳しく評価されます。評価の基準はクリアなようです。雇用形態にかかわらず高評価を得た方は昇進もあり、教育係やバックオフィス等へ異動なさる方もいらっしゃいます。一種の実力社会です。

幸い、保険業、ソフトウェア、携帯電話等のコールセンターは常に求人があります。一方で、これらの領域で働いている人には、特定の知識が日々蓄積されていきます。元々、社会経験があり転職経験もある方が多いので、転職に対して強いアレルギーはありません。業界内を転職することにより、現下のストレスから離脱してうまくいく場合もしばしばです。このような環境のため、比較的短期で精神症状が改善し治療終了という方が多いのではないかと思っています。

次回は、「コンサルの世界」についてお伝えします。

※1:「2021年度 コールセンター企業実態調査」報告(一般社団法人日本コールセンター協会)

岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]

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