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【識者の眼】「COVID-19患者への配慮:COVID-19患者に優しい社会をめざしたい」西條政幸

No.5113 (2022年04月23日発行) P.64

西條政幸 (札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)

登録日: 2022-04-05

最終更新日: 2022-04-05

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歴史的に感染症患者は差別や偏見に苦しむ。その代表的な事例は科学的根拠に反してなされた政策に基づくハンセン病患者に対する差別と偏見の助長である。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)患者やその家族も、本来は支援を必要とする方々であるにもかかわらず「隔離」されるべき患者と見なされ、その延長上で差別や偏見を受けている。

札幌市では2021年4月からSARS-CoV-2アルファ株による、それに引き続き7月からはデルタ株による大規模COVID-19流行を経験した。札幌市では2020年1〜12月の、アルファ株出現前までのCOVID-19患者の致命率は2.66%であったが、アルファ株流行時では3.34%に上昇し、明らかに致命率が高まった。アルファ株流行期では、COVID-19患者の多くがとても重い病状を呈し、入院治療を要する患者の多くに入院治療の機会を提供することができなかった。

その頃、母子家庭で二人の子どもは元気であるが、母がとても重篤な状態に陥り、入院治療が必要な状態の家族があった。入院治療を提供しようにも二人の子どもを看てくれる人がいない。夜間、なんとしても入院させなければならない状況で、ある病院の医師は二人のお子さんとともにこの患者の救急入院を引き受けて下さった。その時の病院医師への感謝の気持ちは忘れられない。その母が電話口で力弱くささやかれた「助かった」という言葉も今も耳に残っている。年齢が二人とも20歳の若いご夫婦がCOVID-19陽性となり、感染リスクを心配しながら生まれたばかりの生後0カ月の乳飲み子に授乳する、そのご夫婦の強い不安を感じ取ったことも忘れられない。統合失調症を抱えた成人の介護をしている高齢の母がCOVID-19に罹患し、入院を要する状態になっても、統合失調症の方の介護への支援を得ることが難しいために、なかなか入院治療を受けることが難しい例も経験した。この親子は、二人を同時に入院調整することでその危機を脱した。入院調整と言っても個々の患者で事情は異なる。ここで紹介した患者のように、社会的、経済的、健康的に不安を抱えている方がCOVID-19に罹患するリスクは、そうでない方に比べると高く、その方々の入院調整はより困難である。

毎日多くのCOVID-19患者に向き合っていると、COVID-19を含む感染症は決して公平に拡がるわけではないことを実感する。一人ひとりの患者背景を理解して、それに合わせて患者にきめ細やかに支援したいと考えている。また、COVID-19患者が差別を受けたり、偏見を持たれたりしない、患者により優しい社会にしたいと思っている。

西條政幸(札幌市健康福祉局・保健所医療政策担当部長、国立感染症研究所名誉所員)[新型コロナウイルス感染症]

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