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【識者の眼】「九州男児医大ってダメ?」邉見公雄

No.5106 (2022年03月05日発行) P.59

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2022-02-17

最終更新日: 2022-02-17

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受験シーズン真っ只中。新手のカンニングや切り付け事件など何かと話題の多い今年の入試。先日、2021年度の医学部の男女合格率が逆転とのニュースが目に止まった。遅かれ早かれそうなり、ロシアのように医師は女性の職業となるであろうとの予想が随分と早まった。以前公表された私立医大での女性受験者足切りが影響したのか、もっと以前から実際の実力はそうだったのかも知れない。このことに特に異論はないが、医師の需給への影響は大きい。厚生労働省の医師需給分科会では、30〜50代の男性医師の仕事量を「1」とした場合、女性医師を「0.8」と計算しているので、5人で4人と1人減。乳腺外科以外の外科や整形外科が敬遠されるのは確実でワークライフバランスの重視や勤務医の働き方改革法制化も重なる。

私の経験で言うと、女性医師は地方には来たがらない傾向が男性医師より強い。ここで私が地方の病院長だった頃の笑えぬ経験談を紹介したい。当院へ後期研修医としてほぼ内定の女性医師から電話あり。「最後にお尋ねしたいが先生の街にはデパートありますか?」と。最初は何? と思ったが彼女の意図がわかったので「ありません」とお答えした。実は地方デパートはあったのだがスーパーに毛が生えた感じで彼女の思うものではないと考えて。もし当院へ来たものの歓迎会の後すぐに辞められる危惧を考慮したのである。それではスタッフに迷惑だけでなく患者にも大迷惑、職員の士気にもマイナスと。彼女の頭の中には三越や伊勢丹が浮かんでいると深読みの結果。その後一切連絡はなし。

以前、男女共同参画が言われはじめた頃に東京女子医大の関係者に意地悪っぽく尋ねてみた。「女子医大には男子も入学できる?」と。答えは「入試要項に女性に限るとは書いていない」、事務の方に調べてもらうとその通り。次に会った時に「孫が成長したら受験させます。孫は男だけだから」と話した記憶がある。その後、奈良女子大が男子の入学を認めた。実際に入学者がいたかどうかは不明であるが。医師の地域・診療科・業態(勤務医と開業医)の3大偏在は、残念ながら前世紀からほとんど解消していない。医師は増加しているが地方や産婦人科、外科は現状維持か微減である。もし今年50周年を迎えた自治医科大学が無かったら、と思うとゾッとする。

そこで提案するのが“男子医大”である。語呂から“九州”にしたが九州でなくてもよい。医師少数県の岩手や新潟、静岡県東部も適地ではなかろうか? 読者諸賢の御意見を‼

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[医学部受験][医師偏在]

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