株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

CLOSE

【識者の眼】「第6波以降のHER-SYSへの期待」土屋淳郎

No.5104 (2022年02月19日発行) P.56

土屋淳郎 (医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)

登録日: 2022-02-01

最終更新日: 2022-02-01

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

新型コロナウイルス感染症の第6波が猛威を振るっている。HER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理支援システム)へのアクセスが一時的に困難となっていたことからも、HER-SYSを管理する厚生労働省の想定を上回っているのではないかと考えている。この感染者急増に伴い保健所業務も逼迫しているため、東京都では診療・検査医療機関による健康観察等支援事業も始まった。これは、発生届を提出した医療機関が、引き続き自宅療養者の健康状況を電話等で確認するもので、HER-SYSに後から追加された「My HER-SYS」という機能を利用することも可能だ。

My HER-SYSは陽性となった自宅療養者がスマートフォンなどで自身の健康状態や体温、SpO2などを入力できる仕組みで、状態に応じて「注意」等のアラートが表示される。これらの情報を保健所や経過観察担当医などが確認することで、重症化などを素早く見つけ対応することが期待されている。しかし、My HER-SYSの利用はまだあまり伸びておらず、多忙な保健所も十分に使いこなせていないのではないかと推察される。

一方で、東京都ではフォローアップセンターでの健康観察となった場合、自宅療養者は原則LINEを利用し、宿泊療養となった場合にはMy HER-SYSと似た機能を持つLAVITA(日本光電)を利用することになるが、これらのシステムはデータ連動がまったくできていない。システム管理者が異なるのでやむをえないところもあるとはいえ、療養場所や健康観察担当者が変わると、利用するシステムも変わる運用では自宅療養者も戸惑うし、保健所や医療支援を行う医療機関でも経過を追えず、煩雑さが増すばかりなので、システム連携や連動性の向上が望まれるところである。

またHER-SYSの入力項目が多く、1人陽性者が出ると発生届を提出するのにそれなりの時間が割かれることも、診療・検査医療機関における逼迫を助長している一因である。HER-SYSにはエクセルファイルによる一括インポートが可能であるため、当院ではWEB問診システムの情報を発生届のテンプレートに合わせて出力させることで、複数の発生届の提出を簡便に行えるよう検討しているが、ワクチン接種情報はVRS(ワクチン接種記録システム)のデータを利用するとか、ハイフン、スラッシュ、括弧などの禁則処理を自動化するなど、もう少し入力が簡便になってくることにも期待したい。

国の対応が次々変わる中でもHER-SYS自体は使いやすくなっている印象を持っているが、第6波以降もより使いやすく、有用なシステムになっていくことを強く願っている。

土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[新型コロナウイルス感染症]

ご意見・ご感想はこちらより

関連記事・論文

もっと見る

関連物件情報

もっと見る

page top