No.5099 (2022年01月15日発行) P.65
大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)
登録日: 2021-12-23
最終更新日: 2021-12-23
患者から補完代替療法の利用について相談されたときの対応として、なぜ利用しようと思ったのか、その背景や理由について丁寧に傾聴することの重要性を以前指摘した(本欄No.5053でも紹介した)。しかし、実際の臨床現場では、個別の補完代替療法について、より具体的な対応を求められる場面があることは想像に難くない。今回は、そのようなときに役に立つ情報を紹介したい。
米国の統合医療・補完代替療法に関する国立機関であるNCCIH(National Center for Complementary and Integrative Health)は、各種施術・療法の現時点における科学的根拠、利用にあたっての注意点などをTips(助言・ヒント)として整理している1)。たとえば、以下のようなものがある。
・うつ病に対するセントジョーンズワートについて知っておくべき5つのこと
・サプリメントについて知っておくべき5つのこと
・薬とハーブの相互作用について知っておくべき6つのこと
・更年期障害と補完療法について知っておくべき4つのこと
・オメガ-3脂肪酸と心臓病の関係について知っておくべき5つのこと
患者が抱えている身体的・精神的な症状に対する補完代替療法の効果や安全性あるいは具体的な施術・療法に関する科学的根拠や注意点について、5〜7項目程度で要点がまとめられており、該当するページを印刷して患者に渡すだけでも事足りる内容になっている。
このようなコミュニケーションツールがつくられている背景には、NCCIHが国民・患者に対して補完代替療法について主治医に相談することを推奨するキャンペーン(名称:Time To Talk)に取り組んだことがある。そして、相談を受けた医師が対応に困らないように作成されたものが今回紹介したTipsである。なお、これらは日本語に翻訳され「統合医療」情報発信サイト[eJIM]に掲載2)されているので、興味のある方は、アクセスしてみてもらいたい。
【文献】
1)NCCIH:Tips on Complementary Health Practices.
[https://www.nccih.nih.gov/health/tips]
2「統合医療」情報発信サイト[eJIM]「コミュニケーション」.
[https://www.ejim.ncgg.go.jp/pro/communication/index.html]
大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法㉕]