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【識者の眼】「メディアや書籍で商品の宣伝を行う広告塔のような医師はいる?」大野 智

No.5096 (2021年12月25日発行) P.64

大野 智 (島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)

登録日: 2021-11-30

最終更新日: 2021-11-30

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筆者は厚生労働省の事業で、民間療法をはじめとする補完代替療法と、どのように向き合い、利用したらよいのかどうかを考えるために、エビデンス(根拠)に基づいた情報を紹介する「統合医療」情報発信サイト[eJIM]の作成に携わっている。そして、患者が氾濫する情報に惑わされないように、情報リテラシーの向上を目的としたコンテンツ「情報の見極め方クイズ」1)を制作し公開している。クイズは全10問あり、質問に対して○×で回答する形式となっている。

先日、クイズの各設問について正答率を確認してみたところ驚いたことがあった。

各設問は『「私の病院で、この治療法を続けている人は100%必ず治ります」は本当?(答え:×)』『「このサプリメントを飲んだら病気が治った」それって本当?(答え:×)』といった具合に、回答者にとって容易に正解がわかるような内容になっている。しかし、唯一、本稿のタイトルになっている「メディアや書籍で商品の宣伝を行う広告塔のような医師はいる?(答え:○)」だけが極端に正答率が低くなっていたのだ。この結果は裏を返せば、多くの患者・国民が、広告塔のような医師は“いない”、言い換えると、「医師が推奨している補完代替療法は信頼できる」と考えていることになる。

だが、現実に目を向けると、医師自らが自由診療の名の下、効果が不確かな補完代替療法を提供しているケースが散見される。直接関わらなくても、名義貸しのように広告塔となっているケース、さらにはその販売手法が問題視され薬機法違反による連帯責任が問われ書類送検される、といった不名誉なケースなども後を絶たない。

医師が補完代替療法に関わることを否定しているわけではない。しかし、前述のような事例が繰り返されれば、医療全体に対する不信感にも繋がりかねない。補完代替療法に関わる医師は患者・国民からの信頼を裏切ることがないよう襟を正してほしい。

【文献】

1)「統合医療」情報発信サイト[eJIM]「情報の見極め方クイズ」.

  [https://www.ejim.ncgg.go.jp/public/hint/quiz.html

大野 智(島根大学医学部附属病院臨床研究センター長)[統合医療・補完代替療法

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