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HPVワクチン積極的勧奨再開へ─キャッチアップをどう進めるか【まとめてみました】

No.5092 (2021年11月27日発行) P.14

登録日: 2021-11-24

最終更新日: 2021-11-24

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厚生労働省の厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会(分科会長:脇田隆字国立感染症研究所長)は11月15日、子宮頸癌などを予防するHPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンの定期接種の積極的勧奨再開に向け、接種機会を逃した若年女性への対応(キャッチアップ)の議論を開始した。2013年以降8年以上にわたる積極的勧奨の差し控えは接種率にどのような影響を与え、どのようなキャッチアップが必要とされているのか。

HPVワクチン積極的勧奨再開の流れは、10月1日に合同で開催された厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会副反応検討部会と薬事・食品衛生審議会薬事分科会医薬品等安全対策部会安全対策調査会(以下、合同部会)で決まった。

「積極的勧奨再開を妨げる要素はない」

この日の合同部会では、田村憲久厚労相(当時)が8月31日の記者会見で積極的勧奨再開に向け検討を開始する考えを表明したことを受け、再開の是非について審議した。

委員の間で①HPVワクチン接種後に生じた多様な症状とHPVワクチンとの関連についてこれまで国内外で調査が行われてきたが、エビデンスは認められていない、②海外の大規模調査で子宮頸癌の予防効果が示されてきている、③リーフレット等を通じてワクチンの安全性と有効性について十分な情報提供が行われるようになっている─などの状況が確認され、「大きな方向性として、積極的勧奨の再開を妨げる要素はない」と結論づけた。

8年前の2013年6月に「国民に適切な情報提供ができるまでの間、定期接種を積極的に勧奨すべきではない」との意見を取りまとめた合同部会自身が了承したことで、積極的勧奨の再開は事実上決まり、厚労省は再開に向けた準備に入った。

2014年度以降、接種率1%未満に

今後、HPVワクチン接種を推進する上で大きな課題となるのが、8年以上にわたる積極的勧奨の差し控えで接種機会を逃した若年女性への対応(キャッチアップ)だ。

厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会は11月15日、積極的勧奨の差し控えが接種率などに与えた影響を確認した上で、キャッチアップ接種の進め方について議論した。

2013年度以降の接種率の推移を見たのが。HPVワクチンの定期接種の対象は小学6年〜高校1年相当の女子(標準的な接種期間は中学1年の年度)。3回の接種が必要で、①2価ワクチン「サーバリックス」の場合、1回目接種から1カ月後に2回目、6カ月後に3回目を接種、②4価ワクチン「ガーダシル」の場合、1回目接種から2カ月後に2回目、6カ月後に3回目を接種─とされているが、1回目の接種率は、積極的勧奨差し控え後の2014年度から1%を下回る状態が続き、リーフレットによる情報提供が始まった2018年度から徐々に上昇している。

キャッチアップ対象者の範囲が焦点

厚労省は、キャッチアップ接種の対象者として「2013年度に16歳だった1997年度生まれ〜2022年度に17歳になる2005年度生まれ(9学年)」「2013年度に13歳だった2000年度生まれ〜2005年度生まれ(6学年)」「2022年度に20歳になる2002年度生まれ〜2005年度生まれ(4学年)」の3案を示し、接種機会の公平性や接種年齢が高くなるほどワクチンの有効性が低くなることなどを踏まえた審議を求めた。

最も範囲が広い「9学年」案の場合、2022年度に25歳になる女性に対しても接種を行うこととなるが、海外には25歳以下のHPV未感染者で高い有効性が示されたとの報告もあり、分科会がどのような判断を示すかが注目される。

キャッチアップの対象について産婦人科医の柴田綾子氏は「医学的には26歳までの女性ではHPVワクチンによる癌の予防効果が十分に高いと報告されている」として、多くの女性に対し無料でキャッチアップ接種を進めるべきとの考えを示している。

もう一度無料でワクチン接種を受けられるチャンスを(柴田綾子 淀川キリスト教病院産婦人科医長)

─積極的勧奨の再開が決まったことについて産婦人科医としてどう受け止めているか。

子宮頸癌のみならず肛門癌や中咽頭癌なども予防できるHPVワクチンの積極的勧奨再開が決まり、とても良かったと安堵している。

米国、英国、オーストラリアをはじめ多くの国では女性だけでなく男性にもワクチンを接種しているが、日本は積極的勧奨の差し控えにより、ワクチンの存在すら知らない方が多くいる状況。勧奨の再開によりワクチンの情報が届きやすくなり、一人一人がワクチンを打つかどうかを決められるようになると思う。

─接種機会を逃した方へのフォローについてどう考えるか。

日本では2013年から8年以上積極的勧奨が差し控えられたため、接種率が1%以下になっていた。この間、HPVワクチンの接種対象だった女性には、もう一度無料でワクチン接種を受けられるチャンスをつくってほしい。

医学的には26歳までの女性ではHPVワクチンによる癌の予防効果が十分に高いと報告されている(コクラン・レビュー)。男性にHPVワクチンを接種することで、性感染症としてのHPVを減らし、社会全体での感染者を減らす効果も海外で報告されている。接種の機会を逃してしまった方に対しては、厚労省が作成したHPVワクチンの説明リーフレットなどを郵送して案内すると分かりやすいと思う。

【関連記事】

[識者の眼]HPVワクチン積極的勧奨再開の決定について(岩田健太郎)

[識者の眼]エビータの命を奪った子宮頸癌(早川 智)

[質疑応答]HPVワクチンに関する最近の動きは?(岡部信彦、多屋馨子)

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