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【識者の眼】「コロナ対策の『新しい段階』において求められている2つのこと」和田耕治

No.5093 (2021年12月04日発行) P.57

和田耕治 (国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)

登録日: 2021-11-18

最終更新日: 2021-11-18

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ワクチン接種の推進などもあり、幸いなことに新型コロナウイルス感染症の感染のレベルは、現在は落ち着いている。コロナ対策も「新しい段階」へ入ったと言えそうである。今回は、誌面の関係もあり、2つ提案したい。

1.  対策について「なんのために必要か?」改めて言語化を

この約2年、マスクの装着やワクチン接種は個人と公共の便益として多くの方の協力のもと実施してきた。また、様々な対策も現場で行われている。今後においては、それぞれの対策は「なんのために必要か?」を改めて整理したい。対策を行った場合と行っていない場合に、感染対策としてどの程度の効果の差があるのかにもっと注目したい。

3回目のワクチン接種についてもあてはまる。ワクチンは海外から輸入して確保する必要があり、自治体での準備などが必要なため、大きな話題になっている。しかし、今後、先行するであろう医療従事者や高齢者などに対して、どういう目的または便益が得られるので3回目が必要なのか、2回だけと比べて何が効果として異なるのか、といったことについて丁寧な情報提供が求められる。

2.  日常の具体的な場面について専門家へ「あなたならどうしますか?」と問いを

政府や自治体としての発信には、得意なことと不得意なことがある。「こういう場面が危険ですからやめてください」という「引き算」は比較的わかりやすい。

しかし、「こういう場面は良いです」という「足し算」は、個別の事象が様々であり、難しい。例としては、「マスク会食」や「会食は4人まで」などを発信してきたが、時期的に厳しい状況だったこともあり、必ずしも良い事例とはならなかった。

今後は、個別の具体的な場面について、専門家に「あなたならどうしますか?」と問うとよい。たとえば、「会食する際はどうしますか」や、人生の大事な場面である「あなたの子供の結婚式ならどうしますか?」などである。

「地域の流行状況による」と「ワクチン接種をしているかどうかによる」は前提にはなるものの、様々な場面で具体的な回答が引き出せるはずである。また、専門家によって意見は異なったとしてもそれは当然で、それらを市民は複数見ながら考えていくことになるであろう。

メディアにはこうした問いをして、できることを増やしていくような事例づくりにぜひ協力してほしい。実はメディアもこうした足し算が得意ではないという話もある。様々な批判もあるからであろう。しかし、こうした時こそ力を専門家とともに発揮していただきたい。

和田耕治(国際医療福祉大学医学部公衆衛生学教授)[新型コロナ対策]

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