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■NEWS 【欧州糖尿病学会(EASD)】血糖低下作用を最大化する追加薬剤選択を目指して:RCT“TriMaster”(1)

登録日: 2021-10-06

最終更新日: 2021-10-06

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欧米ガイドラインが推奨する2型糖尿病(DM)薬剤治療は、メトホルミンを第一選択薬とし、血糖管理不十分な場合に他剤併用を検討する。この併用薬選択にあたって考慮されるのは合併症や有害事象などであり、「血糖低下作用の最大化」という観点はない。エビデンスがないためである。そのエビデンスの空白を埋めるべく実施されたのが、ランダム化試験(RCT)“TriMaster”である。その結果、患者の表現型を基準とした薬剤選択により、より良好なHbA1c低下作用が得られる可能性が示された。

927日からオンライン開催された欧州糖尿病学会(EASD)において、Beverley Shields氏(エクセター大学、英国)らが報告した。

TriMaster試験では2つの仮説が検証された。すなわち、HbA1cの低下作用は「BMI>30kgm2ならばDPP-4阻害薬よりもグリタゾン系薬で大」(仮説1)、「eGFR<90mL/分/1.73m2ならば、SGLT2阻害薬よりもDPP-4阻害薬が強力」(仮説2)―である。

背景にあるエビデンスは、「BMI30kgm2」例に対するグリタゾン系薬のHbA1c低下作用増強[ADOPT試験]や、DPP-4阻害薬での減弱[PRIBA試験]、また「eGFR60mL/分/1.73m2」における、SGLT2阻害薬を上回るDPP-4阻害薬のHbA1c低下作用[Dennis JM. 2020]などである。

これらの仮説を検討すべく、対象患者(後述)はグリタゾン系薬(ピオグリタゾン)群、SGLT2阻害薬(カナグリフロジン)群、DPP-4阻害薬(シタグリプチン)群の3剤を順番に服用する、6通りのパターンにランダム化され、二重盲検法で追跡された。各薬剤の服用期間は12週間で、服用終了時ごとに各種評価を実施した。薬剤変更時の非服用期間は設定されていない(ただし解析の結果、有意なキャリーオーバー効果は観察されず)。また、薬剤不忍容の場合、服用を中止後、直ちに次の薬剤に移行した。

対象となったのは、メトホルミン(±SU剤)服用下で「HbA1c7.512.2%」だった2DM 503例である。

平均年齢は61.9歳、男性が73%を占めた。スクリーニング時のHbA1c平均値は8.5%で、52%SU剤を併用していた。

その結果、1次評価項目の「到達HbA1c」を全体で比較すると、グリタゾン系薬、SGLT2阻害薬、DPP-4阻害薬とも、およそ7.6%で、群間差は認められなかった。ただしこの値は、服用を12週間継続し、服薬アドヒアランスが80%以上だった例のみを対象とした結果である(グリタゾン系薬:421例、DPP-4阻害薬:391例、SGLT2阻害薬:408例)。

次に、上記仮説の検討を示す。

まず、全例をBMIの高低で2群に分け、グリタゾン系薬とDPP-4阻害薬によるHbA1c低下作用を比較した(仮説1)。すると、「BMI30kgm2」(141例)では、DPP-4阻害薬群でグリタゾン系薬群に比べ0.13%の低値となった(有意差なし)。一方、「BMI30kgm2」(215例)ではグリタゾン系薬群で0.14%の有意低値となっていた。

適切に患者を選択すれば、HbA1cに最大0.27%の差がつく計算である(P=0.003)。

次に、eGFRの高低で2分して、DPP-4阻害薬とSGLT2阻害薬を比較すると、eGFR6090mL/分/1.73m2」例ではDPP-4阻害薬群でSGLT2阻害薬群に比べ、HbA1c0.15%の有意低値となった。一方、「>90mL/分/1.73m2」例ではSGLT2阻害薬群で0.09%の低下傾向が見られた。適切な患者選択によるHbA1c差は0.24%となる(P=0.002)。

なおBMIeGFRいずれの高低も、薬剤への「忍容性」と「低血糖リスク」には影響していなかった。

本研究は、英国国立衛生研究所(NIHR)から資金提供を受けて実施された。

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