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【識者の眼】「コロナで考えたこと(その3)─医師は過剰か?」邉見公雄

No.5086 (2021年10月16日発行) P.60

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2021-10-04

最終更新日: 2021-10-08

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コロナでわかったことの一つは感染症専門医が極端に少ないことである。ある全国紙によると、主たる診療科を「感染症内科」とする医師がいない県が数県ある(厚生労働省の三師調査に基づく)。約50年前に田中角栄氏が唱えた「1県1医大構想」は沖縄県をもって完遂したが大学にもいないのか?

保健所の医師も足りず、全国知事会が保健所長の医師要件を外すよう要望したことを記憶されている方も多いだろう。公衆衛生学などの志望者も少なく、臨床で頑張った方が落ち着き先として赴任したところでのコロナ騒ぎ。急に業務が多忙となり辞職が相次いだとの報道もある。その行動もわからない訳ではない。

卒後臨床研修2年の義務化により研究適齢期を逃してしまい、鉄を冷えてから鍛たなければならなくなってしまった、と嘆くリーダーを多く知っている。また、研究に入る予定の人が臨床の面白さに引き込まれ戻ってこない、とボヤく友人もいる。ここへ3年から4年の新専門医制度が加わるとさらに成り手が少なくなるのでは? と彼らは戦々恐々としている。

専門医機構に関わってわかったことは、19番目の総合診療医だけでなく他の18分野の基本領域学会の方々も医師が足りていないと訴えておられることである。女性医師の増加や医師の働き方改革などでさらに多くの医師が現場には必要となる。人口減やAIの導入、遠隔診療やタスクシェアリング、タスクシフティングを頑張ったとしても暫くは無理、とほとんどの医師は考えているのではなかろうか。

にもかかわらず、医師会の一部の方々と財務省が呉越同舟的に医師は過剰と言い始めた。今回のコロナ禍でICUや医師少数地域で週数回当直してドクターローソンをやっている方達のことはまったく考えず、9時5時のビル診の医師の数のみを見ているのだろうか? 医師の3大偏在解決は医師を減らして成り立つものはない。緩やかなマッチングも必要である。プロフェッショナルオートノミーだけに頼っていては堂々巡りが続くだけと考えるのは私だけだろうか。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[新型コロナウイルス感染症]

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