お知らせ
2型糖尿病患者の暑熱によるシックデイ様の血糖上昇について
2型糖尿病患者において，夏日の暑熱により熱中症気味となり，それに伴い軽度のシックデイ様に血糖変動が上昇気味になる現象がしばしば見受けられます。2型糖尿病性腎症患者でも2期までの微量アルブミン尿期までの患者では同様ですが，いわゆる3期，顕性アルブミン尿期以降では，暑熱によるシックデイ様の血糖上昇が認められなくなる症例を経験しました。考えられる原因，病態の診断，治療等について，文献を併せてご教示下さい。（青森県 W）
【回答】
【自律神経障害の合併によるカテコラミン分泌障害の可能性】
暑熱や脱水によるコルチゾールやカテコラミンなど拮抗ホルモンの血中濃度上昇は，シックデイにおけるストレス反応と同様の現象ですが，2型糖尿病患者で暑熱が血糖値や拮抗ホルモンに与える影響を検討した報告は数が少ないようです1）。ご質問のケースでは，腎症の進展に並行して，自律神経障害の合併によるカテコラミン分泌障害が生じているのかもしれません。1型糖尿病患者に暑い環境で運動させると，皮下のインスリン吸収促進がより強く影響するからか，涼しい環境と比べてカテコラミン上昇が強いにもかかわらず血糖値は低い報告があり2），インスリン治療中かどうかも影響しそうです。
糖尿病患者は暑い日に死亡するリスクが高く3），特に血糖コントロール不良例で暑熱に対する体温調節機能が弱い4）ので，適切な補水と居住環境の整備が重要と考えます。
【文献】
1）Westphal SA, et al:Endocr Pract. 2010;16(3): 506-11.
2）Rönnemaa T, et al:Eur J Appl Physiol Occup Physiol. 1991;62(2):109-15.
3）Schwartz J:Epidemiology. 2005;16(1):67-72.
4）Yardley JE, et al:Diabetes Technol Ther. 2013; 15(6):520-9.
【回答者】
鈴木 亮 東京医科大学病院糖尿病・代謝・内分泌内科 教授
