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【識者の眼】「日本の遅れを世界にさらす東京五輪」渡辺晋一

No.5076 (2021年08月07日発行) P.57

渡辺晋一 (帝京大学名誉教授)

登録日: 2021-07-27

最終更新日: 2021-07-27

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政府は安心安全な五輪と言うが、既に新型コロナウイルス感染症対策のバブル方式は穴だらけで、検疫の際や選手村で感染者が次々と発見されている。このままでは南米由来のラムダ株などが日本に持ち込まれ、さらに選手村から世界に変異株が拡散される可能性がある。また開会式でも五輪の理念に反する人が関与していることが世界に知られるようになった。

既に何回も述べているように、感染症対策の基本は①感染者の発見、②隔離、③治療である。しかし感染者の発見に必要なPCR検査を政府の分科会は抑制し、世界とは逆行してきた。その理由を検査のキャパシティがないからと言うが、1年前から民間や大学では今の何倍も検査が可能であった。最近は五輪の検査のためか、東京では日本人の検査数が減少している。

第5波を迎えても政府は感染拡大につながる五輪を強行開催する。しかし政府の感染対策は、飲食店の時短営業だけで、頼みの綱のワクチン接種は先進国中、最も遅れている。海外では当たり前のロックダウンは日本では一度も行われていない。アクリル板の設置にしても、適切に設置しようとすれば、部屋の大きさ、隣席との距離や換気によって異なるが、実際には飲食店任せである。また食事は黙食・個食が基本で、会話の際はマスクを装着すべきであり、政府が推奨する「マスク会食」は意味不明である。感染対策ができないのであれば、頻回の検査により陰性者同士の会食にすべきである。また先進国では飲食店に速やかな補助金を出すが、日本では、税金は国民のためではなく、選挙に勝つための利権として貯えるようである。

ここ10年ぐらい前から、政府は公文書の隠蔽や改竄など専制国家的なことをし、選挙前には責任を痛感すると言うが、一度もその責任を取ったことはない。経済の分野でも、日本人一人当たりのGDPはOECD加盟国中26位へと下がっている。確かに10年ほど前から日本の株価は上昇し、その恩恵は一部の日本人と海外投資家が受けているが、日本人の給料はほとんど上がっていない。この間先進国では国民一人当たりの給料が年々上がっているのと対照的である。宮内庁長官によると、天皇陛下は五輪開催による感染拡大を懸念しているという。一方で、五輪に反対する人は反日的だと前首相は言う。結局今の政権は、国民のためではなく、権力を維持するために五輪を利用するようである。「悪夢の東京五輪」として歴史に名を残さないことを祈るばかりである。

渡辺晋一(帝京大学名誉教授)[新型コロナウイルス感染症]

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