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患者負担が少ないがん検査で健康寿命の延伸、医療費削減に貢献したい[クリニックアップグレード計画 〈システム編〉(30)]

No.5073 (2021年07月17日発行) P.14

登録日: 2021-07-14

最終更新日: 2021-07-14

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人口動態統計によると、日本人の死因で最も多いのは40年連続で悪性新生物となっている。がん治療が著しい進歩を遂げているにもかかわらず、死亡者数は右肩上がりの状況が続く。厚労省はがん検診を推進しているが、日本の受診率は約40%と国際的にも低い。連載第30回は、患者の時間的・経済的負担が少ない形で受診可能な新たながん検査を導入、かかりつけ医として1次スクリーニングに取り組むクリニックの事例を紹介する。

日本におけるがんの人口10万対死亡率は、高齢化などの理由により、死因で初めて第1位となった1981年の142から2020年は307.0にまで上昇している。一方、欧米ではがんによる死亡が横ばい、または減少傾向にある。米国のがん検診受診率は70%~80%とされるのに対し日本は約40%で、職場での対策型検診が多いという状況から、男性に比べ女性の受診率が低い傾向にある。

日本人ががん検診を受けない理由は図1の通り。「時間がかかる」「費用が高い」「がんと分かるのが怖い」「検査に伴う苦痛への不安」といった理由が並ぶ。神奈川県川崎市にある村山整形外科では、こうしたがん検診受診のハードルを下げる新たな検査を導入、地域住民に対し2019年8月から月1回のペースで実施している。

 

がんの1次スクリーニングが低価格で可能

同院は厄除けで有名な名刹川崎大師の参道に構える整形外科クリニック。院長の村山均さんは、横浜市立大医学部卒業後、同大関連病院や県立がんセンター骨軟部腫瘍外科などを経て、2002年に開業した。健康寿命を延ばしQOLを維持するという診療方針を掲げ、フレイルの予防などにも力を入れている。

村山さんは整形外科として一般的な骨折や外傷、骨粗鬆症などの患者に診療を行う中で、がん検査も実施。県立がんセンター勤務時に末期のがん患者と数多く接するうちに、早期発見や予防の観点から検査の重要性を目の当たりにしたことに加え、血中アミノ酸の濃度バランスからがんリスクを判定するアミノインデックスの発明者である岡本直幸さんと懇意にしていたことがきっかけだったという。

「当院では以前からがんのリスク検診が重要と考え、アミノインデックスを採用していましたが、がん検診のきっかけとして、あるいはがんのスクリーニングとしてより多くの方に受けてもらいたいという思いから、毎月日曜午前にリスク検診を実施することを決めました。岡本先生が新たに開発されたがんのリスク検診が低価格であり、クリニックの負担が少ないシステムであることが決め手となりました」(村山さん)

血液中の微量元素濃度の変化で判別

同院が導入しているがん検査は、レナテックが開発した「メタロバランス(MB)検査(がんリスク検診)」(https://metallo-balance.net/)。光触媒や半導体を手掛け、岡本さんが顧問を務める機械装置メーカーのレナテックが「体調に変異を来すと血清中の微量金属元素濃度が変化する」ことに着目し、がんにおいても同様に変化するのではないかという仮説のもと、共同研究先の千葉県がんセンター研究所および神奈川県立がんセンター臨床研究所から提供された「がん罹患者」「健常者」それぞれの血清の濃度バランスを解析。その結果、濃度に違いがあることが判明し、また、がんの種類ごとにも違いがあることも分かり、がんリスクスクリーニング検査として実用化した。

受検者の血液中の微量元素などの濃度をがん罹患者のものと比較・解析し、その類似度合いからがんリスクを判定。男性は大腸や膵臓、前立腺など6種類、女性は乳がんや子宮頸がん、卵巣がんなど9種類のスクリーニングができる()。感度・特異度は90%とされている。

特徴は①検査所要時間は10分程度、②費用は男性6種類、女性9種類で1万6500円、③ステージによる感度・特異度に差がない、④採血6mLのみで苦痛が少ないーなど。がん検診を受診しない人たちでも比較的受診しやすい検査といえる。

検査の運営はアウトソーシング

同院はMB検査をレナテックのMAC(Medical Assist Contract)サービスというシステムを活用して運営している。図2はMACサービスの流れ。広告宣伝や予約事務、検査結果の報告、代金の収納などをフルサポートする仕組みで、受付やナースを非常勤スタッフとして雇用しても、MB検査用にスタッフトレーニングをするサービスも含まれている。

「がんのスクリーニングを患者さんに大きな負担をかけずに実施できることに加え、MACサービスによって当院でも1日3時間で100人以上受け入れることができ、スタッフのシフトなどに苦労せず安定した検査収入が見込める点もメリットです。大半の受診者が新規の方なので、クリニックの宣伝につながり、新患が確実に増えています。1年後に検査の再受診のご案内を送付するサービスもカバーされているので、クリニック側の手間はほとんどかかりません」(村山さん)

 

“ハイブリッドがん検査”の提案

MB検査で重要なのは、あくまでがんリスクのスクリーニングであり、確定診断は従来の検査を受ける必要がある点。MB検査の有用性を村山さんはこう語る。

「自費で価格の安いMB検査で地域のかかりつけ医が1次スクリーニングを行い、陽性と診断された場合は2次検査として検診センターなどで受診してもらうという“ハイブリッドがん検診”が普及すれば、精度は同等ながら医療費の削減につながると思います。MB検査は地域のクリニックでも導入しやすい検査です。MB検査を通じて地域のかかりつけ医として皆さんの健康づくりに貢献していきたいと考えています」

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