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クッシング症候群[私の治療]

No.5071 (2021年07月03日発行) P.38

一色政志 (埼玉医科大学内分泌・糖尿病内科准教授)

登録日: 2021-07-04

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  • 副腎から分泌されるコルチゾールの分泌とその作用が過剰になり,特徴的な身体徴候とともに心血管,代謝,骨,皮膚,精神など全身の合併症をきたす。副腎腺腫からのコルチゾール過剰分泌を狭義のクッシング症候群と呼び,下垂体からのACTH(副腎皮質刺激ホルモン)過剰が原因となる病態をクッシング病(「クッシング病」の稿参照)として区別される。また,悪性腫瘍などに伴う異所性ACTH分泌や薬剤によっても同様の病態が生じる。

    ▶診断のポイント

    【症状】

    満月様顔貌,野牛肩,中心性肥満,皮膚菲薄化,腹部赤色皮膚線条,近位筋の筋力低下,高血圧,耐糖能異常,骨粗鬆症,月経異常,うつ症状など。

    【一般検査所見】

    血中コルチゾール高値,ACTH・DHEA-S低値,低カリウム血症,末梢好酸球減少。

    【診断のための検査】

    オーバーナイト1mgデキサメタゾン抑制試験で,翌朝のコルチゾールが抑制不十分(3mg/dL以上)。コルチゾールの日内変動消失(夜間血中コルチゾールが3mg/dL以上)。腹部CTで副腎腫瘍,131Iアドステロール副腎シンチグラフィーで同部位に集積,典型的には健側副腎が萎縮する。

    ▶私の治療方針・処方の組み立て方

    根治をめざした副腎腫瘍の摘出が原則である。副腎皮質癌が疑われる場合は,手術時の腹膜播種を避けるため開腹術が望ましい。片側副腎摘出後,健側からのコルチゾール分泌の回復に時間がかかる(通常6カ月以上)ことが一般的であり,その間グルココルチコイドの補充が必要である。コートリル®(ヒドロコルチゾン)を,症状に応じて補充し,徐々に減量・中止していく。減量時には関節痛などにより術前よりQOLが低下しうるので注意する。早急に血中コルチゾール濃度を低下させるべき重症例,手術不能例,不完全な腫瘍摘出例,再発例,副腎癌の転移などではコルチゾール合成阻害薬を使用する。

    急速に血中コルチゾール濃度を低下させる場合には,11β-水酸化酵素阻害薬(11-デオキシコルチゾールからコルチゾールへの変換を阻害)であるメトピロン®(メチラポン)を使用する。約2時間で作用発現が認められ,中止により効果は消失するが,投与継続により約10~20%にエスケープ現象が生じる。投与により増加するコルチゾール前駆物質である11-デオキシコルチゾールは,標準コルチゾールアッセイと交叉しうるので,効果のモニターには注意を要する。3β-ヒドロキシステロイド脱水素酵素阻害薬であるデソパン®(トリロスタン)も使用可能であるが,副腎性アンドロゲンが増加し多毛症が出現する。一方,オペプリム®(ミトタン)は細胞毒性により束状層や網状層を破壊し,作用は緩徐で平均3カ月後から発現し,エスケープ現象は認められず,中止後も長期間体内に残存する。主に副腎皮質癌で術後補助療法として用い,治療域が狭く血中濃度モニターが必要であるが保険適用はない。

    病期Ⅲ~Ⅳの進行副腎皮質癌では,EDP(エトポシド,ドキソルビシン,シスプラチン)+ミトタン療法が,病態進行を遅延させると報告されている(FIRM-ACT研究)1)。そのほか,抗真菌薬であるケトコナゾールもメトピロン®同様に11β-水酸化酵素阻害作用を有するが,わが国では保険適用外である。副作用の中でも特に副腎不全が予想される場合,適宜または治療開始時より,生理量以上のコートリル®の補充とともに,高コルチゾール血症に伴う高血圧や糖・脂質代謝異常などの合併症の厳格な管理と感染症予防を行うことが肝要である。

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