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【識者の眼】「内野か外野か?─大学トップの選考方法」邉見公雄

No.5071 (2021年07月03日発行) P.65

邉見公雄 (全国公私病院連盟会長)

登録日: 2021-06-18

最終更新日: 2021-06-18

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私を無害・無色・無欲の老人と思われるのか、大学や病院の外部委員、自治体などの有識者会議に引っ張り出されることが増えてきた。何事も勉強、年の功で少しはお役に立てるかもとの思いで、厚かましくも殆どお引き受けしている。ところが近年、少し困ったことが起きている。大学トップの選考に関し、下部の内部選考と上位の選考委員会が異なった方を推薦する場合である。東京大学の総長選考が典型的で、私のよく知る例としては滋賀医科大学の学長選が挙げられるが、他にも一次選考と最終選考の結果に対して訴訟になったこともあると聞く。

一次選考の場である有識者会議の構成も、教授だけの所から事務職員や学生の代表も加える所など千差万別。大学の自治が大手を振って通っていた面もあり、政治色が色濃く出る時も稀有ではなかった。また医学部の外科教授選考に際し、殆ど関係のない法医学や公衆衛生学等といった基礎医学の教授や看護学科の教授が他の分野の外科教授と同じ重みの一票だったりと、大学によってまちまちである。業績手腕よりポピュリズムになりかねない危惧もある。私学では経営陣の理事会が実質的に決め、教授会の選考結果は参考程度という大学もあるようである。建学精神が重んじられているのであろう。

このような現状を踏まえ、学長のガバナンスを強化することを目的に法律が改正され、選考委員会に加える外部委員の人数を明確化することとなった。外部委員は会社で言えば社外取締役の立場である。学内の純粋培養的愛校心の塊のような方々にとって、これは腹立たしく煮えかえるような思いを抱かれるであろうことは理解できない訳ではない。しかし今の社会は説明責任、ガバナンス、コンプライアンスが尊重され、全体最適のためには学術会議の任命拒否の際に釈明した菅首相お得意の“総合的・俯瞰的な観点”も必要なのであろう。

野球で言えばバッテリーや内野だけでなく、外野やベンチ、或いは観客席や放送席からの視点も重要ではないかと思うとともに、大学と文科省の関係が東芝と経産省の関係のようになっては絶対にダメ、と気を引き締めて会議の場に臨んでいる今日この頃である。年寄りの杞憂ならいいのだが…。

邉見公雄(全国公私病院連盟会長)[外部委員]

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