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【一週一話】虫垂リンパ組織による大腸の恒常性制御機構

No.4750 (2015年05月09日発行) P.45

正畠和典 (大阪大学大学院医学系研究科小児成育外科学)

竹田 潔 (大阪大学大学院医学系研究科免疫制御学教授)

登録日: 2016-09-08

最終更新日: 2017-02-20

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  • 虫垂は盲腸から細く伸びる内腔を持つ臓器で,虫垂リンパ組織と呼ばれる発達したリンパ組織を有するが,その免疫学的機能は不明で我々の身体にとって不要な臓器と考えられてきた。虫垂に炎症を生じて発症する急性虫垂炎は,日常の臨床で小児から成人の急性腹症の原因疾患としてよく遭遇するが,外科的切除の適応になってきた。近年,虫垂と潰瘍性大腸炎との関連を示唆する報告がなされ,虫垂が大腸の免疫応答に関与している可能性も示唆されている1)。本稿では,虫垂リンパ組織の免疫学的機能および腸内細菌に対する制御機構について我々の知見を紹介する。

    腸内細菌を含めて体内に微生物がまったく存在しない無菌マウスは,免疫系が未発達で腸管の恒常性維持に重要な役割を果たすIgAの産生量が著明に低下するが,腸内細菌を定着させるとIgAが誘導される。虫垂の免疫学的機能を解析するために,無菌環境で虫垂を切除した無菌マウスを作成し腸内細菌を定着させ,免疫系の発達に及ぼす影響を調べた。その結果,大腸のIgA陽性細胞の産生量が虫垂を切除したマウスにおいて顕著に遅れ,減少していることが判明した。

    腸管のIgAは腸内細菌叢の制御に重要な役割を果たしており,虫垂切除マウスの糞便中の腸内細菌叢を解析した結果,IgAの低下に伴い腸内細菌叢のバランスが大きく崩れることが明らかになった。また,小腸に存在するパイエル板は,主に小腸にIgAを誘導し,小腸の恒常性を維持している。一方で,虫垂で産生されたIgA陽性細胞の動態をカエデという光変換蛍光蛋白質を発現している特殊なマウスを用いて解析した結果,小腸,大腸に移動することが判明し,そのメカニズムには虫垂リンパ組織内に存在する樹状細胞を未熟なB細胞に誘導するケモカイン受容体が重要な役割を果たしていることを解明した。以上より,虫垂リンパ組織は小腸および大腸に動員されるIgA陽性細胞を産生する誘導組織で,大腸の腸内細菌叢のバランスを維持していることが明らかになった2)

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