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■NEWS プラズマ乳酸菌の経鼻接種で自然免疫応答誘導による感染予防効果の可能性を示唆─KIRINと感染研が共同研究の成果発表

登録日: 2024-11-29

最終更新日: 2024-11-29

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キリンホールディングスは11月18日、Lactococcus lactis Plasma(プラズマ乳酸菌)を用いた自然免疫誘導型ワクチンに関する研究の成果発表会を開催し、プラズマ乳酸菌の経鼻接種により誘導された自然免疫が新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)とインフルエンザウイルスの増殖を抑制する可能性が示唆されたことを報告した。同研究は2021年から国立感染症研究所と共同で実施しており、2024年3月に日本医療研究開発機構(AMED)の先進的研究開発戦略センター(SCARDA/スカーダ)が公募したワクチン・新規モダリティ研究開発事業に採択されている。

発表会では、キリンホールディングス執行役員の藤原大介氏(ヘルスサイエンス事業本部ヘルスサイエンス研究所所長)が「われわれは常に新規感染症の脅威にさらされている。広範囲のウイルスに効果のある手軽な手段としてプラズマ乳酸菌に着目している」とした上で、自然免疫誘導型ワクチンの開発について「プラズマ乳酸菌によって活性化された自然免疫プラズマサイトイド樹状細胞(pDC)がインフルエンザウイルスを侵食する反応に着目し、この反応をワクチン化できないかと考えた」と説明した。

プラズマ乳酸菌接種群でpDCと抗ウイルス遺伝子が6時間後に増加

研究発表では、キリンホールディングスヘルスサイエンス研究所の城内健太氏が、プラズマ乳酸菌の経鼻接種後の鼻腔細胞中におけるpDCの発生割合の変化と疑似ウイルスに対する自然免疫の反応性の変化や経鼻接種が経時的な自然免疫応答に与える影響を評価するためにマウスを用いて実施した動物実験の結果を報告した。

pDCの発生割合を巡っては、疑似ウイルス投与の3日前と1日前にプラズマ乳酸菌の接種群と非接種の対照群を比較。対照群に比べ接種群で鼻腔細胞中の活性化したpDCの割合が高かったことを報告。疑似ウイルスに対する抗免疫物質であるインターフェロンαの産生量についても対照群に比べ接種群が高かったことを報告した。

経時的な自然免疫応答に与える影響については、鼻腔細胞内のpDC量と抗ウイルス遺伝子量の変化を調査。ともに接種群では6時間後には活性化したpDC量および抗ウイルス遺伝子量が増加し、24時間後まで維持されていた。

これらの結果から城内氏は、「プラズマ乳酸菌の経鼻接種は、鼻腔での速やかな自然免疫応答の誘導を通して、抗ウイルス作用を発揮する可能性が示唆された」とまとめた。

プラズマ乳酸菌接種によるSARS-CoV-2、インフルエンザウイルスの増殖抑制効果を確認

感染研のエイズ研究センター第一研究グループ長の石井洋氏は、上気道粘膜における免疫反応の誘導に着目し、プラズマ乳酸菌の経鼻接種によるSARS-CoV-2マウス馴化株(QHmusX株)とインフルエンザウイルス(H1N1 PR8株およびH1N1 Narita株)の増殖抑制効果について実験結果を発表した。

SARS-CoV-2感染の3日前と1日前にプラズマ乳酸菌を経鼻接種し、感染2日後の鼻腔洗浄液中、鼻咽頭関連リンパ組織中のウイルスRNA量を測定したところ、対照群である生理食塩水接種群に比べプラズマ乳酸菌接種群ではウイルスRNA量が少なかったことを報告。抑制は2週間にわたり観察された。インフルエンザウイルスについては感染3日後に鼻腔洗浄液中のウイルスRNA量を測定。H1N1 PR8株とH1N1 Narita株いずれの株に対しても対照群と比べてプラズマ乳酸菌接種群でウイルスRNA量が少なかった。

実験結果を受け、石井氏は「経鼻接種によるウイルス増殖抑制効果の持続から自然免疫メモリー誘導の可能性も示唆された」「プラズマ乳酸菌の経鼻接種により誘導された自然免疫は、呼吸器ウイルス感染伝播で重要な上気道において多様な呼吸器ウイルスに対する増殖抑制効果を有する可能性が示された」と述べ、共同研究について「動物実験での感染防御効果の検証が目標。その研究成果に基づき、実用化を見据えた臨床試験への進展を目指す」と見通しを語った。

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