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■NEWS 「がん治療は免疫チェックポイント阻害薬と組み合わせた治療が主役に」―ノーベル賞受賞の本庶氏が講演

No.4931 (2018年10月27日発行) P.21

登録日: 2018-10-22

最終更新日: 2018-10-22

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「がん治療はやがて免疫チェックポイント阻害薬との組み合わせによる治療が主役になる日がくる」―。ノーベル生理学・医学賞の受賞が決定した本庶佑氏(京大特別教授)が19日、神戸市で開催された神戸医療産業都市20周年記念シンポジウムで講演した。

本庶氏はがん治療における免疫チェックポイント阻害薬について「楽観的予想」としつつ、「現在は3大療法(手術、薬物療法、放射線治療)に比べてまだまだマイノリティだが、やがて免疫チェックポイント阻害薬とさまざまな治療を組み合わせた治療が主役になる日がくると期待している」と強調した。現在、免疫チェックポイント阻害薬の併用療法や化学療法、放射線治療など、さまざまな治療と組み合わせた治験が世界で1000以上行われているという。

その一方で本庶氏は、免疫チェックポイント阻害薬が現在は全体の約30%の患者にしか有効ではないことを問題視し、残された課題は「治る人とそうではない人を早めに見極めること」と指摘。また、「30%をせめて50%にできないか、検討が続いている」とした。

■「がんが免疫療法でコントロールされる世紀に」

免疫チェックポイント阻害薬の市場予測については、「著しく拡大し、2024年には4.5兆円」とされていることを紹介。抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体を扱う各企業は、今後7年間は収益トップに立ち続ける見込みだという。その一方で、本庶氏によるPD-1分子の同定を基に開発された「オプジーボ」(一般名:ニボルマブ)の製造販売会社である小野薬品工業の地位はマイナーになってくると予想がたてられており、「非常に残念だ」と悔しさをにじませた。

本庶氏は、「20世紀は、ワクチンや抗生物質の開発により、感染症を克服した。21世紀は、がんが免疫療法でコントロールされ、またこの治療は感染症にも応用可能なので、やがてそうした病気の撲滅につながる世紀になってほしいと願っている」と述べ、免疫療法によるがんと感染症の撲滅の可能性に期待を込めた。

■獲得免疫によるがん克服は「想定外の幸運」

さらに本庶氏は、「感染症に対してのディフェンスシステムとして(抗原特異的な免疫応答を活性化し抗原を排除する)獲得免疫を得た結果、脊椎動物は無脊椎動物に比べて格段にライフスパンが延長した」と進化の過程を説明した上で、獲得免疫をがんに対する大きな武器として医療に役立たせようとしていることについて、「想定外の幸運と言わざるをえない。この幸運をいかにして着実に健康長寿に活用できるかが我々の課題」とがん克服への抱負を語った。

■臨床治験では20~30%の末期がん患者で奏功

本庶氏がPD-1抗体を発見したのは1992年。「大変幸運なことに偶然と言ってもいい状況で見つけた」という。本庶氏は講演で当時を振り返り、「マウスで腫瘍の増殖が抑制されたことを確かめ、成果を臨床に持ち込むためにさまざまな製薬会社にお願いしたが、ほとんど相手にされなかった」と苦労を明かした。06年にはメダレックス社(現在はブリストル・マイヤーズスクイブ社が買収)とのヒト型抗体を用いた臨床治験が開始。12年に発表された研究報告では、296名の末期がん患者の奏効率は20~30%で、「非常に衝撃的だった」と心境を語った。

■今後も次々と医療の実用化の推進を

同日に開かれた記者会見ではPD-1分子の同定からオプジーボの承認に至るまで22年かかったことに触れ、「医療の実用化は、自動車産業などとは異なり非常に長い道のり。なかなか理解いただけないが、今後も次々と実用化が進んでほしい」と新たな医療技術や医薬品の開発を望んだ。

記者からノーベル賞受賞が発信力にどう活きてくるかを問われると、「実績をあげれば、自ずと注目が集まるというのが本当の発信力だ」と考えを示した。

本庶氏は、「免疫療法が今後、がん治療の中心的な役割を担うことは明らか」と強調した

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